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■ 衆議院本会議

■ 平成十六年四月二十七日(火曜) 


衆議院本会議

公益通報者保護法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑

○議長(河野洋平君) 泉健太君。
    〔泉健太君登壇〕

○泉健太君 この場に立たせてくださいましたすべての国民の皆様に感謝を申し上げます。(拍手)
 泉健太でございます。

 民主党・無所属クラブを代表して、また正義と誇りを重んじるすべての国民、そして現在も苦しんでいる公益通報者の叫びを代弁し、政府に対し質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、皆様、もし皆様が御自身のかかわる仕事の中で意図的に不正が行われていることを知ったら、あるいはその行為が多くの人々に不利益や損失を与え、健康被害などを与えていることを知ったら、あなたはそれを黙って見過ごすでしょうか。

 公益通報者保護法とは、本来、正義を貫き、不正を改善したいという当然の行動をしたその人の地位を守り、もって通報を促すことで、組織の自浄作用を高め、公益を確保する法律です。

 しかし、残念なことに、いまだに日本社会では、公益通報が組織に対する裏切り行為と見られる現状があります。国会でも、これらの人々を法律で保護することについて、いまだに古い見識の声が聞こえてきます。密告増進法だと。これはまさに大きな間違いの声でございます。なぜなら、この法律は、中傷目的のいいかげんな通報または匿名の通報者を保護するのではなく、公益通報を行った特定の個人を保護するものだからです。

 竹中大臣、この法律は密告増進法ではないと、改めてその御趣旨を御説明ください。

 さて、我々民主党は、この法の趣旨と国民の声を真正面からとらえ、以下、不完全な政府案を指摘し、質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、この公益通報者保護法の経緯についてです。
 さかのぼれば、ムネオハウスや外務省機密費流用事件、さらには薬害エイズなどでの監督官庁の不正は、その隠ぺい体質が被害拡大の原因でした。公益通報である内部告発によって解決に向かったもの、また、公益通報がなされていれば改善の可能性があったもの、こういった事例が相次ぎ、国民からの強い要望を背景に、我々民主党が一昨年の五月に公益開示法を既に参議院に提出し、本格的な議論がスタートしました。

 さらに民間でも、牛肉偽装事件、医療ミス隠し、リコール隠し、鳥インフルエンザ隠しなど、多くの不誠実な行為が国民に広く被害を与え、それらの多くが公益通報によって明るみになりました。国民、消費者の側からはさらに強く強く、公益通報を促進する法律の制定、そして、そのための方策として、内部でいち早く不正を知り得る立場にある、あらゆる方々の地位を保護する法律の早期制定が求められてきたのです。

 皆さんも、もし医療ミスに見舞われたり、突然大きなタイヤが目の前に転がってきて家族が失われたり、もしそれが、本当は防げたことにもかかわらず、問題が組織内部で隠ぺいされたがために被害に遭ってしまった、そういう被害者であれば、悔やんでも悔やみ切れないんじゃないでしょうか。

 また、加害者側の関係者であったとして、不正や問題点があるとわかっていながら、組織の都合上口に出せない、そして、起こった被害や問題を見て自責の念に駆られる、そんな組織の人間の苦悩をどうお考えになりますでしょうか。現在の警察不正経理疑惑など、その最たるものと考えます。

 そして、勇気ある公益通報にもかかわらず、組織の裏切り者のように扱われ、解雇や減給、嫌がらせなどの不利益を受けてきた方々の苦しみ。

 この被害者、加害者側で苦悩する人々、そして保護されなかった公益通報者、この三者の苦しみに報いる法律をどうしてもつくらなければならないのです。その意味で、政府案は非常に不十分だと考えています。竹中大臣、現在の政府案は、この部分で十分な手当てができているでしょうか。

 さて、そうした国民、そして民主党や野党各党の声を受け、政府はようやく、昨年十二月、骨子の発表、本年三月、政府案の閣議決定となったわけですが、出てきた政府案は、公益通報者保護法ならず公益通報抑制法でありました。与党の皆さんは、このことを御存じなんでしょうか。

 まず、政府案では、保護される対象者の範囲が狭いということがあります。私は、公益通報者には、派遣や下請も含む労働者、退職者はもちろん、さらに、その派遣元の役員、下請企業の役員も当然含むべきと考えます。ところが、政府案では、これは含まれていません。

 日本の企業風土を考えてみてください。上に盾突くようなことをすれば、取引停止、入札外し、あるいは契約単価の引き下げ、これが事実です。保護される法律もなければ、だれが公益通報などできるでしょうか。不正があってもです。結果的に不利益をこうむるのは、消費者、国民です。

 あの雪印食品の牛肉偽装事件。西宮冷蔵の水谷社長は、雪印食品への指摘が受け入れられず、逆に、黙っているのが当然だというような言葉をかけられました。彼は取引停止を覚悟したといいます。

 弱い立場にある労働者同様、不正を知り得る立場にある、時には無理やり不正に協力させられる派遣元企業や下請企業の役員も公益通報者の中に含むべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。(拍手)

 次に、通報対象となる通報事実です。
 政府は、法律の犯罪行為、すなわち罰則のある法令違反のみを対象とすることとして、この政府案に七本の法律を明示し、それ以外の通報対象法令は何と政令で別表に定めるというふうにしております。

 まず、この定め方が問題です。これでは、自動車のリコール隠し、食肉の偽装表示、原発の点検記録改ざんなどの通報が保護されるかどうか、現在もなお不明なままでございます。

 なぜ法律に明示されず、国民に非常にわかりにくい別表という形をとるのか。これでは、公益通報を考えている国民を、自分の通報は保護対象じゃないかもしれないと惑わせる通報抑制の嫌がらせとしか言いようがありません。竹中大臣、この定め方の理由と正当性についてお答えください。

 そもそも、自民党は知っているはずです。政令となれば、官僚が好きなように内容を操れるということを。自民党はこの法案をプロジェクトチームで議論をしているはずです。なぜこのような官僚主導のものを認めるのか。だから小泉政権は全く政治主導がないんです。(拍手)

 公明党の皆さん、自民党はもう皆さん方なくして選挙に勝てない体質になりました。ぜひ、その生活与党としての大きな力をここで発揮していただいて、一緒にこの法案の修正にお力をいただきたいというふうに思います。(拍手)

 それとも、都合の悪い法律を国民に見えないように対象外にするということでしょうか。確かに、そういえば、骨子では明示されていた独占禁止法が削除をされているようです。本来、談合ややみカルテルの防止が期待されていたはずですが、独禁法はいつの間にどこに消えたんでしょうか。経緯も含め、大臣、明確にお答えください。

 また、国民生活審議会の報告書でも、罰則のある法令違反のみでは不十分と指摘をされております。そして、法令違反ではなくても、シックハウス被害や日本で危険度判定がおくれている医薬品や添加物の使用、株主総会対策として株主でない人間へ利益供与をする件など、法律が未整備であったりするケースには、これでは対応できないことになります。

 この法の先進地イギリスでは、もっと広く、環境破壊や情報の隠匿、そういったことも対象にしております。

 私は、まず、罰則規定に関係なく法令違反すべてを対象にすること、そして、法令違反ではなくても、生命や健康、環境に重大な影響を与える事実を対象にすべきと提案いたしますが、大臣、いかがでしょうか。(拍手)

 また、政府案は、骨子よりハードルを上げ、通報の対象となる事実を、まさに生じようとしている場合に限定しました。これは、あらゆる分野における早期発見を妨げるものとなるでしょう。

 ある部署で勤務中、安全基準を満たしていなかった製品の存在を知った、しかしまだ出荷されていないから、これはまさに生じようとしていない、そうしたら、そのうちその人に辞令が出て部署がかわり、情報が入らなくなってしまった、そうしたら、いつの間にか製品が出荷をされ、多くの国民に被害を与えることになった、こうなったらどうするでしょうか。事故が起こってからでは遅いわけです。早期発見が私は必要だと思います。

 法務省入管局がことし二月からホームページで、不審な外国人を見たらすぐ通報しろという見当違いなキャンペーンを張って、人権問題となっております。この通報には非常に熱心な政府が、本当に必要な公益通報になると急にトーンダウンをされているわけです。そして、通報を事実上抑制させようとしている。何事かと私は考えます。

 被害が出る可能性がある時点で通報が行われ、通報者が保護されるよう、生ずるおそれがある場合との要件の緩和を提案しますが、大臣、いかがですか。(拍手)

 さて、この法律では、もう一つ重要な点、法令遵守、コンプライアンス経営の促進が期待をされています。私も、これには異論がございません。だからこそ、この法律は密告法ではなく、法令遵守の促進並びに公益通報者の保護のための法律だと位置づけられているのです。

 労働者や下請企業が疑問を感じ、見つけた問題点や不正を正義感に基づいて組織内へ通報、そして真摯な検討を経て改善に向かっていく、その事項を可能な限り情報公開する、こうした潔い企業、官庁がふえることは大変望ましいと考えております。

 しかしながら、大半の企業、官庁がその努力を行っている一方で、やはり問題や不正の隠ぺい疑惑が後を絶ちません。また、隠ぺいどころか、その通報者をさまざまな手段を使い、労働条件、また精神的に追い込んでいく陰湿な体質も残されております。

 そういった中で、公益通報が組織内部で一向に改善されない場合、マスコミや監督官庁、国民生活センターや消費者団体などへの外部通報で被害を防ごうというのが通報者の当然の心理です。

 しかし、政府案では、外部通報にさまざまな要件を課し、また、その組織が調査しますとさえ答えれば、その後改善が見られない場合でも、すぐには外部通報できないようになっております。これでは事実上問題点が放置をされかねません。私は、公益通報により行った措置や回答について、期限を設けて、あるいは可及的速やかに通報者に回答を通知するよう改めるべきと提案しますが、いかがでしょうか。(拍手)

 また、政府はマスコミや消費者団体の存在をどのように認識されているのか。政府案の外部通報要件には、真実相当性というのがあります。そんな要件を課さないとマスコミはいいかげんなネタを何でも報道するというのでしょうか。彼らは十分な節度を持っております。政府がマスコミや消費者団体を全く信頼していないその姿勢を感じますが、大臣、いかがでしょうか。

 以上、問題点はまだまだございますが、代表的な点の指摘をさせていただきました。

 いま一度、皆様とともに、この法律の意味を確かめたいと思います。

 高い倫理観と人への愛情を持つ、誇りあるこの日本に暮らす人々。だからこそ、正義を貫き、不正を改善したいと行動したその人の地位を守り、あらゆる組織の自浄作用を高め、公益を確保する。これを否定される方はこの議場にはおられないと思います。

 我々民主党は、昨年のマニフェストにおいて、医療機関のカルテ開示、食品安全規制の強化を掲げました。さらに、消費生活用製品の危険情報を公開させる法案の準備も進めております。

 私は、建設的責任政党に所属をする一人として、先ほど述べた数々の提案をもって国民の声を代弁し、今後、与野党の真摯な議論を経て、不完全な政府案を修正、撤回、あるいは再提出をさせることが立法府としての責務だと思います。大臣、その前に、この政府案をみずから撤回し、再提出なさいますか。(拍手)

 被害者、公益通報者、国民の声に真にこたえた法案が必要です。小泉政権が与党内から公益通報されないように、政府の対応に期待をし、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)


    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 泉健太議員から、合計十問の質問をいただきました。

 本法案の趣旨についてのお尋ねでございます。
 本法案は、近年における事業者の犯罪行為や法令違反行為の発生状況等を踏まえ、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産等にかかわる法令の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とするものでございます。

 法案においては、不正の目的、すなわち、金品を受け取る目的や他人に損害を加える目的で行う通報を保護の対象外とするなど、乱用の懸念にも配慮しているところでありまして、中傷目的の密告を促すものでは断じてございません。

 次に、本法案は、被害者、加害者側の事業者、公益通報者、それぞれの立場の方々に配慮した内容になっているのかどうかというお尋ねがございました。

 まず、本法案は、国民の生命、身体、財産等にかかわる法令違反について公益通報を行った労働者、すなわち公益通報者に対する解雇等の不利益な取り扱いを制限して、公益通報者の保護を図っておるものであります。

 また、これによって、事業者による国民の身体、生命、財産等にかかわる法令の遵守を図りますとともに、事業者の犯罪行為や法令違反行為による国民生活への被害の未然防止、拡大防止にも資すると考えております。

 したがいまして、本法案は、それぞれの立場の方々に配慮した手当てとなっているところでございます。

 次に、本法案の保護対象であります通報者の範囲についてお尋ねがありました。

 この法案では、公益通報をした労働者を公益通報者としております。下請や派遣元企業などの取引事業者の役員を対象とする場合には、事業者間の取引関係に保護を加えることが必要と考えられますが、これにつきましては、取引自由の原則から慎重に検討すべきであると考えられますので、公益通報者に含めることはしなかったわけでございます。

 次に、本制度の対象法令の定め方についてのお尋ねがございました。

 本法案では、対象法令を国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令としまして、個人の生命または身体の保護などの分野を例示する、刑法などの法律を例示するということを示しながら、法案の別表に掲げました七法律以外の具体的な対象法令につきましては、政令で定めることとしております。国民生活への影響を見きわめながら、かつ機動的にそれによって対応する所存でございます。

 また、本法律案の公益通報者といいますのは、事業者内部の労働者であるために、当該事業者が遵守すべき法律につきましては、一定の知識を有しているというふうに考えられます。このため、対象法令の範囲が明確化されれば、当該事業者の法令違反行為が通報対象か否か判断できるものというふうに考えているわけでございます。

 次に、当初案に盛り込まれていた独禁法が法案では削除されている、その理由と経緯についてのお尋ねがございました。

 昨年十二月に公表しました法案の骨子案におきましては、議員御指摘のとおり、独禁法を対象法令の例示として掲げておりましたけれども、本法案が対象とするのは、国民の生命、身体、財産その他の利益でありますので、それをバランスよく例示するという観点から、独禁法にかえまして個人情報保護法を掲げることとしたものでございます。

 もちろん、独禁法につきましては、法案に掲げました公正な競争の確保という分野にかかわる法律であると認識しております。そのような点も踏まえながら、政令制定の際には具体的に検討してまいる所存でございます。

 次に、本法案の通報対象を広げるべきではないかというお尋ねがございました。

 刑罰による担保のない法令違反行為や犯罪行為、または法令違反行為に当たらない生命や健康、環境に重大な影響を与える事実というものを本法案の通報対象とすることにつきましては、通報の対象範囲を不明確にしてしまいます。通報者と事業者との間で見解の相違が生じて、制度の運用に当たって混乱が生じるため適当ではないというふうに考えるわけでございます。

 次に、通報対象事実が生ずるおそれがある場合に要件を拡大すべきではないかというお尋ねがございました。

 生ずるおそれがある場合と規定をいたしますと、当事者間の事実認識の相違を生む可能性ですとか、通報によって事業者に損害が発生した場合に、「おそれ」の蓋然性をめぐって争いとなる可能性があります。このため、保護される通報の要件をより明確にするという観点から、まさに生じようとしている場合と規定するのが適当であるというふうに考えております。

 次に、公益通報により行った措置や回答に関する通報者への通知義務についてのお尋ねがございました。

 本法案では、公益通報を受けた事業者に対し、公益通報者に是正措置等を遅滞なく通知する努力義務を課しております。これを期限を設けて、あるいは可及的速やかに通知する義務とすることにつきましては、本法案は、個人事業者、非営利団体や行政機関も含めたあらゆる事業者を幅広く対象にしているため、一律に法律上の義務とすることは適当でないというふうに考える次第でございます。

 次に、マスコミや消費者団体への外部通報についてのお尋ねがございました。

 本法律案では、事業者外部への通報については、法令違反の通報による公益の実現と事業者の正当な利益の保護とのバランスを図るという観点から、通報内容に真実相当性があり、かつ、内部通報では証拠隠滅のおそれがある等々の一定の要件に該当する場合、これを保護の対象とすることとしております。

 一般的に言いますと、報道機関は客観的事実を国民に広く知らせることを通じ、また、消費者団体は消費者利益の擁護の観点から活動することを通じ、それぞれ、事業者の法令違反行為の発生や被害の拡大防止に資する存在であると考えておりますので、本法案における事業者外部の通報先に含まれるものでございます。

 最後に、政府案の撤回についてのお尋ねがございました。
 政府としては、現在の政府案が最良のものと考え提出しておりますので、撤回する考えは持っておりません。(拍手)

○議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。




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