子ども・子育て新システム関連3法案 本会議質問  民主党の泉健太です。民主党・無所属クラブを代表し、ただ今議題となりました子ども子育て3法案について質問いたします。 (子ども・子育て新システムの意義)  この「子ども子育て3法案」は各界当事者の意見と叡智の結晶であります。 こんにちまで政府には2年にわたりワーキングチームが設置され、全国組織の幼稚園団体・保育3団体をはじめ多くの専門家と子育て関係者の皆様が一堂に会し「子育て環境の改善を」「全ての子どもに質の高い教育・保育を」との思い一つに、議論を続けてこられました。 当然ながら、現在の子育て環境とその抱えている課題について認識や進むべき方向性は共有されてきました。この議場におられる多くの各党議員の皆様も、現状認識は一緒だと思います。 またこれまで、日本の子育て支援は時代の変化、社会の変化、国民意識の変化に対応しきれてこなかった。皆様もこの認識は一緒じゃないでしょうか。 例えば今回、社会保障と税の一体改革の中に「子ども子育て政策」が位置付けられ、従来の予算に加え新たに7000億円の財源確保が予定されました。このことは長年の各党の努力によるものであり、子ども・子育て関係者が一様に喜んでいる画期的なことであります。 まず総理、社会保障に子育て支援を位置付けた意味、財源確保への決意、そして法案成立に向けた総理の決意をお聞かせください。 (保育制度改革) 現在、平成22年に閣議決定された「子ども子育てビジョン」に基づき保育所を大幅に増設しています。昨年だけで保育所は300か所以上増え、過去最高の23,385か所に増えていますが、今回の新制度では、認可施設の整備を加速させつつも、それだけにとらわれず地域の事情に、柔軟かつ機動的に対応できるよう株式会社など多様な主体に一定の条件のもとで参入を認めることとしています。 実はこれは自公政権時代の2008年「社会保障国民会議」最終報告の「民間活力を活用する観点からの多様な提供主体の参入」という記述が下地となっており、公明党2010年発表の「新しい福祉社会ビジョン」の中での「効率的な経営で良質なサービスを提供するNPOや株式会社などの参入を進める」との記述とも方向性を一にするものです。 どんな検討をしても方向性は同じです。現状認識が同じだからです。ぜひとも、当事者の目で議論いただいた各界の皆様の努力が成果物となるよう、各党の皆様にご理解いただき本3法案の成立を願うものであります。  小宮山大臣、与野党を超えた方向性であることをご理解いただきつつ、多様な主体の参入には「過当競争」「質の低下」「撤退」などの懸念の声もあります。これらにどんな対策を講じるのかお答えください。 (既存の設置主体の懸念払しょくについて) ちなみにこの多様な主体の参入。都市部以外の地域では、全国で株式会社などが新規参入し地域保育が崩壊するのではないかとの懸念が聞こえます。私は全国約1,400の待機児童のいない自治体では新規事業者のやみくもな参入が認められないようになっていると理解していますが、小宮山大臣いかがですか? (待機児童問題) 次に待機児童問題です。先ほどの保育所増設の大半は待機児童の多い都市部の新規立地であり、自治体も国も事業者も精一杯努力を続けていますが、待機児童の数は「微減」という状況です。 都市への人口集中と共働きの一般化による待機児童増に、保育所増設が追いつかないのです。「もっと予算を確保して都市部に保育所をつくれ」と、誰もが考えつくような主張を続ける専門家もいますが、待機児童問題はもはやそんな次元を超えています。 人と建物が集中する都市部は、地価も高く、適地も少なく、新規立地そのものが難しい、また適地を見つけ予算を投じようやく建設した自治体には、更に子育て世帯が集中し、その自治体の待機児童が一向に減らないという「逃げ水現象」が起きるため、自治体もかなり苦慮しているのが現状なのです。 そこで新制度では、基準を満たす全国の小規模保育や家庭的保育などを「地域型保育事業」に位置付け、公的保育の枠組みに追加しました。 総理、私は可能な限り認可外や自治体独自の認証保育、事業所内保育所などについて国の支援で質と量の底上げを図るべきと考えますが、いかがでしょうか? 女性の就労が日本の成長を支えると言われる時代。潜在ニーズも視野に入れた計画を作り男女ともに「結婚・出産」と仕事を両立できる国にして、若者の晩婚化、晩産化、少子化傾向に歯止めをかけようではありませんか! (市町村の役割) 次に市町村の役割について伺います。新制度への懸念の声には「児童福祉法24条の義務が弱まる。けしからん」というのがあります。 しかしこれは解釈の誤りでしかありません。新制度では保育の確保の措置、情報提供、権利保障、利用支援、支援を要する子どもへの措置などを講じなければならない。とされています。総理、直接契約制度においても市町村は現行通り、子育て拠点の紹介やあっせん、待機児童がある場合の「利用調整」、また障碍児などの入所措置を行いますね?  これまでの児童福祉法24条でも、我が国には残念なことに多くの待機児童が存在してきたのであって、「建前」ばかりを振りかざして新制度を批判するより、もっと現実に目を向け、現状を改善していくことのほうが大事です。 新制度は市町村がニーズ調査と計画策定を行うことで保育需要を把握し、さらに保育の提供を促進しようとしているのです。 (事業者・利用者の不安) 保育料の直接徴収について、未納に対する対応や、所得や家庭環境による入園の選別の懸念が聞こえます。既に導入されている幼稚園や東京の認証保育では直接徴収や契約トラブルの報告は少ないようですが、この点について小宮山大臣、確認いたします。 (総合こども園)  続いて「幼保一体化」施設としての「総合こども園」について伺います。 従来の保育所が「総合こども園」に移行し「教育施設」としても明確に位置付けられることは大きな前進です。今回、幼稚園は制度移行への負担が大きいことを考慮し0〜2歳保育などの「総合こども園」移行をあえて義務化せず、インセンティブで移行を促す、としました。 もちろん従来の「認定こども園」については「総合こども園」への円滑な移行を予定しています。 幼稚園団体・保育団体はこれまでも幼保一体化の研究を続けてきました。今回もその基本的な方向では一致しましたが、幼保一体化は戦前からの歴史的懸案事項であったためワーキングチームでもその協議は非常に困難を極めました。 2年にわたるぎりぎりの協議の中で、ワーキングチームの様々な当事者の総意として今回の「総合こども園」に到達したのです。これは画期的進展であり、強く尊重すべきことだと考えます。 専門家の中には「待機児童対策なら、全幼稚園に0〜2歳保育を義務化すべき」という声もあります。しかしこの協議の経緯をご理解いただければ、きっと現段階での最善の案だということをご認識いただけると思うのです。小宮山大臣、この点どのように議論されたのかお答えください。 質の高い教育と保育を全ての子に。母親の就労の有無によって園を移らなくてよい制度を。小学校への全ての子どもの円滑な接続を。それらのためにも「幼保一体化の推進」は非常に重要なのです。 今、幼稚園受難の時代。午後の預かり保育にも懸命に取り組んでいても「認可保育所は満員なのに幼稚園は定員割れ」。全国で起こっている現実です。園児数は最盛期の3分の2、地方の園は次々閉園し園数は毎年100園ペースで減少しています。全国2割の自治体では幼稚園そのものもありません。 保育所が長蛇の列の中で、日本の幼児教育に接する親子が減り続けている現実に目を向ける必要があります。教育課程はもちろん教諭の待遇、PTA組織など幼児教育の長所は数多くあります。相互の長所を取り入れ「総合こども園」へ移行することで教育・保育がこれまで以上に多くの親子に保障され、広がっていくのです。 さて小宮山大臣、関心の高い新たな教諭資格とは、どのようなものになるのかお答えください。 また平野大臣に伺います。「総合こども園」は福祉施設と教育施設の位置づけを持つとされましたが、そのことは今後、小中高大などの学校への株式会社参入につながっていくのか?私はそうではないと理解していますが、明快な答弁をお願いします。 現在の認定こども園、設置件数は当初目標の半分以下911か所にとどまっています。「総合こども園」への移行にも様々な経費負担や事務負担、保護者への説明が伴うでしょう。やはり確実かつ具体的なインセンティブをつけなければ移行は進みません。総理、「総合こども園」制度発足への思いとともに、どのようなインセンティブを考えているか、あわせてお答えください。 (放課後児童クラブ等)  最後に2つ伺います。ひとつは放課後児童クラブ制度の充実です。小1の壁のみならず、小4の壁の解消を望む声、質的基準の設定を求める全国の声、各党や超党派の議連からも訴えてまいりました。それにどう応えようとしているか? (子ども・子育て会議) そしてもう一つは新たに国に設置され各界の代表者が制度のPDCAサイクルを担う「子ども子育て会議」。この会議体にはどんな権限が付与されるのか? 小宮山大臣お答えください。 (終わりに) 以上、様々な点について質問いたしました。 この議場に集う私たちは、常に子どもや子育てをする人の目線に立ち、子どもを安心して産み育てられる社会の実現のために政策を進めてきました。 当然ながらこれまでの政策は民主党だけが進めてきたものではありません。様々な制度の充実や改革の提言は、歴代政権の曲折と労苦の中で積み重ねられてきたのであり、この「子ども子育て3法案」もその流れにあるのです。 日本の成長を支えるには少子化の克服が急務です。私はそのためには、今を生きる国民の結婚・出産と育児を支援することが何より大事だと考えます。 確かに子育ては「家族」と「自助」が基本です。しかし少なくとも「私らの頃は手当や施設がなくてもちゃんと育てた」という、過去の経験、過去の家族像、地域像、精神論を、今の若者世代に求めても何の解決にもなりません。 子どもを産み育てたいという国民の願いを支える仕組みを具体的かつ迅速に政策にし、推進することが今ほど必要とされているときはありません。 ぜひ「反対」「賛成」という二元対立を超えて、各党の皆様にご議論ご協議いただき、この法案の成立を願っています。 一国民として、子育て中の父親としても強くそれを願うのです。 日本の子育て支援を一層に前に進めようではありませんか。 以上、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。 以上