衆議院内閣委員会
平成16年5月21日(金)
公益通報者保護法について(2)
| 答弁者 |
|
国務大臣(経済財政政策担当)
|
竹中平蔵君 |
| 内閣府副大臣 |
伊藤達也君 |
| 内閣府大臣政務官 |
西川公也君 |
| 政府参考人(内閣府国民生活
局長) |
永谷安
賢君 |
| 政府参考人(公正取引委員会
事務総局経済取引局取引部長) |
山木康孝君 |
| 政府参考人(警察庁長官官房
長) |
吉村博人君 |
山本公一内閣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。泉健太君。
泉健太委員 きょ
うも、公益通報者保護法案ということで議論をしていきたいと思います。
もう大分論点が明確になってまいりましたが、この公益通報に関連をして、五月十六
日、大変残念なことですが、とうとう官邸が報道を統制するような、そんな問題が出てきております。皆さんもうしかめっ面をしていますが、御承知のことかと
いうふうに思います。(発言する者あり)正しいなんという声もやはりあるわけですね。
まあひどいものだというふうに思います。十六日の夕方に日本テレビが、米支援に対
する調整、それを報道したということで、その日の夜に飯島秘書官が、日本テレビの政治部長あてに対して、電話で三つのことを言っているわけですね。日朝交
渉を妨害するために報道したのではないか、そして、報道の取り消しをすべきだ、さらには、応じない場合には北朝鮮への同行取材を認めない。これはもう明ら
かに圧力ということで受け取らざるを得ない話だというふうに思います。
さらには、次の日、日テレ側から連絡をとろうと思ったけれども、秘書官は全く電話
もつながらずにそのままの状態が続き、さらに、情報源を明かせば同行を許可するというところまで言ったわけです。
これは結果的にはやはり大きな問題だということで白紙撤回をされましたが、きょ
う、通告をいたしましたが、官房長官、官房副長官、来ていただけないということでありますので、本格的なこの件に関しての話は二十六日、ぜひ御出席をいた
だいて、していきたいというふうに思っております。しかし、ここにやはり大きな問題があると思います。
そもそも、情報源の秘匿というものは、これは記者が守るべき職業倫理ですね。記者
の内部でも、これは職業倫理として当然あるべきものだというふうに思います。そしてまた、それ自身は表現の自由や報道の自由にもかかわる問題です。
要は、内部告発とは違いますが、ネタ元をばらせというようなことを国民の代表であ
る官邸の側が言ったというのは、これは大きな問題だと思うんですね。この内部告発、公益通報者保護法案においても、もし会社側から、おまえ、これの情報は
どこから来たんだ、ばらせばらせという圧力が来て、それをばらしてしまったら、それは通報者を全く保護することにはならないわけです。
さて、この件に関して、竹中大臣、このような、情報を明かせ、ネタ元をばらせとい
うようなことを言った飯島秘書官のことについて、感想をお願いいたします。
竹中国務大臣 今回の件、報道はもちろん承知をしておりますが、具体的に個別のイシューとして今
回の問題がどういうことであったのかということを私は承知しておりません。したがいまして、極めて一般的なお話ということにならざるを得ませんですが、私
自身、今、政府の中で仕事をしております。
政府の中に入る前は、ニュース番組のコメンテーター等々もして、ニュースの側から
の政府というものを見る機会もございました。だから、報道の自由というのは大変重要でありますし、報道をしている立場から見ると、政府というのはもっと情
報を明らかにすべきではないかということをよく感じることもございます。同時に、政府の中から見ますと、やはり本当に規律のある、節度のある報道をしてい
ただきたいものだというふうに感じることもこれ等々ございます。
そうした中で、我々は日々葛藤しながら、しかし、報道の自由、そういう大原則をや
はり社会の欠かさざる一つの価値としてしっかりと守っていかなければいけない、そのような方向で小泉内閣全体は対処しているというふうに私は思っておりま
すし、個々の問題につきまして、繰り返しになりますが存じ上げないわけでございますけれども、これはそうした立場で官邸もしっかりと対応しておられるとい
うふうに思っております。
泉健太委員 いや、官邸は対応していないからこういうことになったわけですよ。できていないん
です。
これは御本人さんなりあるいは官房長官が来られたときに追及をしたいというふうに
思いますが、どの時点でこの事態を首相や官房長官が知っていたのかということは、これから恐らく大きな問題になってくると思いますよ。やはり、このことを
承知してリストから外すということをしたのか、それとも、承知をしていなかったというのであれば、こういったことを独断で秘書官が決めたということにもな
りますから、いずれにせよ、私はこれは問題だというふうに思っております。
二十六日、その部分については誠実な御答弁をいただけるものと思っておりますけれ
ども、しかし、きょうは公益通報者保護法の審議ですから、ぜひ大臣にお願いをしたいのは、こういった事実があったわけですね。この法案の担当の大臣とし
て、やはりこういった言動があったことというのは重く受けとめなければならないと思うんです。
これは、ほかの大臣よりも、竹中大臣が、この今回の飯島秘書官の問題についてはや
はりしっかりとした態度をあらわさなければだめだというふうに私は思います。その意味で、別にマスコミの目の前で言えというふうには思いませんけれども、
やはり飯島秘書官に対して大臣の方から、私はこういう通報者保護を担当している、こういった形で情報源をばらせというような圧力がかかるような事態は決し
てあってはならないことなんだということはぜひ言っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 繰
り返しになりますが、この個別の問題につきまして私は承知をしておりません。し
たがいまして、この問題に対してどうこうするということを言うことは、これはなかなかできないわけでございますけれども、常に閣僚の一員として、閣内で我
々としてはしっかりと政策をしていく、また報道の自由、表現の自由、そうしたことについては改めてしっかりと確認しながらやっていこうではないか、そうい
うことは常に私なりに呼びかけていきたいと思います。
泉健太委員 私
たちは、例えば官邸の皆さんも大臣も御存じかと思いますが、オフレコ取材という
ものが当然あるわけでして、そういったマスコミと我々議員の側の、あるいは官僚の側のモラル、良識でこの関係が成り立っているわけですね。そういう良識が
ないようであればやはり官邸を去っていただくべきだということを最後にお伝えして、この問題はきょうはこの辺で終わりたいというふうに思います。
もう時間も本当になくなってまいりましたが、でも、議論が尽くせなければ、この公
益通報者保護法案、ぜひ、やはり細かく、なるべく公益通報が促されるように、我々はこの法律が制定されることを望んでおりますので、修正なり協議をこれか
ら続けていきたいというふうに思っております。
この幾つかの論点について、きょうは再度質問させていただきたいと思います。
まず、通報者についてですけれども、現在、政府案では「労働者」のみが通報者とい
うことになっております。我々民主党、昨日この公益通報者保護法案の修正案というものを発表させていただきました。
もしかしたら、もう新聞報道なり事前の情報で御承知いただいているかもしれません
けれども、我々は、やはり「公益通報者保護」と言ったときに、この「公益通報者」は何を指すのかということをもう一回冷静に頭を冷やして考えるべきだと思
うんですね。いろいろなケースがこれまで出てきました。さまざまな企業不祥事、出てきました。そういう中で、公益通報者が必ずしも労働者ではないケースが
あるというふうに思っております。
労働者は当然保護されるべきものだというふうに思っておるわけですけれども、しか
し、先日も御答弁でいただいておりました、例えば下請事業者。下請の労働者であればこれは対象者になるけれども、下請事業者そのものは対象にならないとい
うことがこれまでの議論の中で明らかになってきたわけです。
政府側の答弁では、契約自由の原則に基づくものだからそれは乗り越えられないんだ
ということをおっしゃるわけですが、私はそうじゃないというふうに思うわけですね。これまでの答弁では、あの消費者基本法でもあったように、消費者は事業
者に比べると情報の質、量、そういったものに格差があるということをお認めになられた。
では、労働者はどうですかと聞いたときには、労働者にも同じように事業者との格差
があるというふうにお認めになられた。では、下請事業者そのものはどうですかということについても、同様だったかというふうに思います。
やはり情報の質、あるいは会社の規模、情報の量、さまざまな格差がもう既に生じて
いるわけですね。そういう中で、なぜ下請事業者を含めないのかということを改めて確認したいと思います。大臣。
西川大臣政務官 下
請事業者などの取引事業者の問題。確かに、通報者に含めるかどうか、こういう問
題も、国民生活審議会においても各般の意見がありました。何らかの保護を加えるべし、こういう意見もありました一方で、事業者間の取引関係に保護を加える
ことは、今先生が御指摘のように取引自由の原則から慎重にすべきだ、こういう両論があったわけであります。
意見の一致が得られなかった、こういうことで昨年の五月の提言には盛り込まなかっ
た、こういう状況でございます。本法案では、このような国民生活審議会での議論を踏まえて、慎重な検討が必要との判断から通報者に含めなかった、こういう
ことでございます。
泉健太委員 で
あればお伺いをいたしますけれども、しかしながら、一致した意見になるものと、
審議会の中でも多数決でそこに書かれたもの、一致したもの、いろいろな形があると思うんです。そこについて、全部が一致をしなくても、こういった委員会の
審議の中で十分にそれは変わっていく可能性があるものと考えますが、いかがでしょうか。
西川大臣政務官 意
見が一致されておれば、もうそれは間違いなく対象にしてくるわけでありますけれ
ども、意見が分かれた場合どの辺をとるか、こういうことは、政府としても判断材料にいろいろな意見を取りまとめていかなきゃならない、こういうことであり
まして、今回、当面今の案でいきたい、こういうことで私どもは判断した、こういうことでございます。
泉健太委員 い
や、まだこうやって質疑が続いているわけですから、判断をしたといっても、ぜひ
それは変えていただきたいという話を今しているわけですから、審議会で終わっているんだったらこの委員会は要らないわけですよ。そうですよね。当然ここで
修正がなされる可能性があるから我々はこうして話をしているわけです。
もう一回言いますが、下請事業者というのは弱い立場であることは政府もお認めに
なっているわけですね、親事業者に比べて。この辺について、契約自由の原則があるから慎重にならなければならないというふうにおっしゃられましたので、
きょうは公正取引委員会をお呼びしました。
まずお伺いをしたいんですが、公正取引委員会の中で、委員会の中でというか、下請
代金支払遅延等防止法というのがございます。ここで言われているところの「親事業者」そして「下請事業者」の定義についてお答えいただきたいと思います。
山木政府参考人 下
請代金支払遅延等防止法におきまして、「親事業者」と申しますのは、この法律は
物品等の製造等の委託取引を対象にしているところでございますけれども、そういう委託取引の発注者でございまして、取引上優位にある、相対的に優位にある
というふうな地位にあると認められる事業者を「親事業者」と考えているところでございます。(泉健太委員「下請も。定義」と呼ぶ)
「下請事業者」につきましては、取引上劣位にあると考えられている事業者でござい
ます。
泉健太委員 で
は、この法律がそもそも制定をされた理由についてお答えをいただきたいと思いま
す。
山木政府参考人 下
請法につきましては、昭和三十一年に下請取引の公正化を図るということを目的に
制定された法律でございまして、親事業者の優越的な地位の濫用を防止するということによりまして、下請取引の公正化を図るということを目的とした法律でご
ざいます。
泉健太委員 こ
の法律を見ても、下請事業者というのはもう優位、劣位という関係にあるわけです
ね。
そして、独禁法の中にも、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」
と。その中には、「優越的地位の濫用」というものがありまして、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当
に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」というのを禁止しているわけですね。いろいろな不利益を与えることについてのことが書かれているわけで
すが、こういうことがたくさん起こり得るからこそ、こういう法律が制定をされているわけですね。
きのう、公正取引委員会から資料をいただきましたけれども、こういった下請事業者
がさまざまな不利益取り扱いを受けるケースが、一年間に千件から千五百件前後、もう現実にあるわけなんですよ。これは公益通報と関係ない話ですよ。いろい
ろな形で、しかし、下請事業者が弱い立場にあるということはもう明確にここでなっているわけなんです。
さらにまた、下請中小企業振興法という法律もあります。こういう法律の中でいいま
すと、「「下請事業者」とは、中小企業者のうち、法人にあつては」一部中略しますけれども「自己より大きい法人又は常時使用する従業員の数が自己より大き
い個人から委託を受けて」業を行うものということで、やはり、日本の社会全体を見れば当然この方々が弱い立場ということは証明をされているわけです。
であるならば、労働者と区別をするということではなくして、当然これは弱い立場で
あり、また、契約自由の原則も調べさせていただいたら、必ずしも契約自由の原則がすべてまかり通るわけではないということは、もう皆さん、いろいろな学説
ですとかこれまでのそういった専門書なんかでは御承知のことかと思うんですね。
契約自由の原則とはいうものの、例えばそれは借地借家法、利息制限法あるいは労働
基準法、さまざまな形で、自由競争に逆に弊害をもたらす場合があるというときには法律がちゃんと定められているわけなんですね。
という観点からすると、やはりこれは下請事業者を含めて当然ではないのかなという
ふうに思いますが、大臣、いかがですか。
西川大臣政務官 委
員から重ねての要請のような質問でありますけれども、何度も申し上げますけれど
も、私ども、両論あった、こういうことは十分理解をしております。しかしながら、意見の一致を見なかったし、この法案をつくるに当たりましては、意見の集
約の中で、下請は、先ほどの取引自由の原則、これを優先して外した、こういうことでございまして、御理解をいただきたいと思います。
泉健太委員 と
いうことは、政務官は、もし下請事業者が公益通報をして保護されなくてもそれは
仕方がない、あるいは、保護されないから公益通報をしなかった、そして公益に大きな被害が出ても仕方がないということでよろしいでしょうか。
西川大臣政務官 私、
前職は経済産業大臣政務官でありまして、下請中小企業振興法、この改正のとき
も担当いたしました。そのときに、大変な意見がいろいろ出ました。日本の下請は元請に対して力が弱いのが大多数だ、こういう話がありまして、下請という言
葉を使うのすら反対だ、こういう人も与党の中におりましたけれども、実態は実態として、支払いが正当に行われるとか、あとは権利を主張して元請に理解をし
てもらうとか、こういうことを再度確認する、こういう意味でも中小企業の下請を振興しよう、こういうことでやりましたわけであります。
私は、中小企業の育成を大切にやっていくべきでありますし、日本の九九・七%が中
小企業でありますので、この振興にこれからも意を尽くしていきたい、こう思っております。
泉健太委員 い
や、今の御答弁は余り関係ないお話で、そのお気持ちはよくわかるんですが、そう
ではなくして、現実にこれは公益通報がなされるかなされないかによって大きな問題になるか。
まあ、三菱さんの場合はそれは大企業ですけれども、例えば公園の遊具の問題、これ
はもう皆さん御承知かと思いますが、必ずしも大きい会社じゃないわけですよ。例えば、いろいろなところから発注を受け、下請が実際には工場で遊具をつくる
なんというケースはごまんとあるわけです。
そういう状況があり、危険性が指摘をされながら、しかしそれが内部のままで改善を
されない段階で、もしこの下請事業者そのものを含めなければ、これはやみに葬られてしまう。出てくるときには被害という形で、人命が失われたり環境被害が
あるという形でしか出てこないんですよ。それでいいんですか。
西川大臣政務官 重
ねての御質問でありますけれども、私どもは、対象は労働者に限定をしていきた
い。そして、労働者は、自分の職場で自分が物づくりに当たっておるわけでありますから、十分、その危険性というのを把握するのに一番最初に把握できるはず
でありますし、労働者からの通報を守っていく、こういうことにしてこの法案をこれからつくり上げていきたい、こう思っております。
泉健太委員 大
臣は、西宮冷蔵のその後というのは御存じでしょうか。すべてというのはなかなか
難しいかもしれませんが、再建の努力を今なされているんですね。もう一回いろいろな許可をとろうと思っているんですが、一部、営業の許可が出ないなんとい
うところもあって。それは個別のケースですから、ほかにもいろいろな要因があるのかもしれません。
しかし、一度内部告発というものをした人の中で、それは西宮冷蔵の場合でいえば再
建ということでしょうが、個人的なレベルでいえば再就職であるかもしれません、いろいろな形で、立ち直りというのは非常に大変なわけなんです。
事業者というのは、下請の事業者ではありますけれども、従業員がおり、家族がいる
わけですよ。再建をしていかなきゃならない、再起をしていかなきゃならないというときに保護をされない、契約が打ち切られる、あるいは入札から外される、
こういう事例が次々と出てくるのがもう当たり前になっているわけですから、これはもう世の中だれが見たってそういう状態があるということはわかっているわ
けですから。
審議会の御議論はよくわかります。しかし、審議会の御議論をここで発表して、私た
ちは決定しましたといったのであれば、委員長、これはせっかく議論していても仕方のない話でありまして。これは今回どうしても御修正いただけないんです
か。あるいは、今後、願うならば、私たち民主党は、ここは一致した思いとして、何としても下請事業者を入れていただきたいという思いがありますけれども、
いかがでしょうか。
西川大臣政務官 誤
解をされてはいけませんのでもう一度申し上げますけれども、法案をつくるとき
に、社会的な要請があって、こういうものをつくりたいということになって初めて法案をつくっていくわけでありますけれども、そのときに、国民生活審議会、
こういう場を用いて私どもは国民の意見を取りまとめ、聞いてきた、こういうことでありまして、これらの議論を踏まえながら、政府として考えてこの法案をつ
くり上げた、こういうことでございますので、審議会の意見そのものが法案になった、こういうことではございませんということを再度申し上げさせていただき
ます。
泉健太委員 そ
れで、さらにそれを踏まえて、この委員会の議論を踏まえて御修正をいただくとい
うことですね。そういうことだというふうに思っておりますので、ぜひこの点については、今回どうしても入れられないというのであれば、我々は引き続き主張
していきたいというふうに思います。
そもそも、この法の趣旨は、できるだけ幅広に、一番最初に公益を侵害する事象があ
る、それを防ぐために公益通報を促しましょうということであるんですね。公益の侵害、例えば生命や財産、環境の被害がないような社会だったら、別に公益通
報者保護という話は本来出てこないわけですよ。では、なるべく通報対象者、これを広げた方がいいに決まっているわけですから、その点、きっとそう思ってい
ただけるものと信じていますので、これから、なるべく通報者を広げていく努力、これをぜひしていただきたいと思いますし、我々は、もちろん、政権をとれ
ば、この法律は修正をしたいというふうに思っております。
次に移りたいと思いますけれども、対象法令についてです。
今現在、政府案では、犯罪行為に限定をするという状況になっております。これもこ
れまでの議論の中で再三御答弁をいただきましたが、納得のいく答弁ではなかったというふうに思います。改めて、なぜ犯罪行為に限定をするのか、この理由に
ついてお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 こ
れも、我々として、もちろん最終的に我々が判断したわけでございますけれども、
そのベースになっているのは国民生活審議会での審議でございます。
この国民生活審議会の審議はどのようなものであったかということを申し上げます
と、規制の制定は後追いになることが多い、法令違反だけではなくて被害のおそれ等を通報の対象に含めないと国民生活への被害が防止できないのではないかと
いう意見が確かにございました。
一方で、範囲の明確な、これは法令違反というのは範囲が明確なわけですけれども、
それ以外の通報を対象に含めますと、その通報の対象が不明確になり、保護対象となると信じて行った通報が裁判の結果保護されない場合が生じるおそれがある
といったふうに、制度の運用に当たってやはり難しい問題、混乱が生ずるのではないかという意見もございました。そうした双方の意見があったということでご
ざいます。
こうした議論を踏まえまして、この国民生活審議会の報告書では、最終的にいろんな
議論を集約する形で、制度の通報対象として保護される通報の範囲を明確にするという観点から、法令違反とすることが考えられるというふうに、これはこの報
告書の中で提言がなされたところでございます。
本法案では、この国民生活審議会での提言も踏まえまして、保護される通報の範囲を
明確化するという観点から、犯罪行為と法令違反行為を通報の対象としたということでございます。
泉健太委員 非常にありがたく、そういうふうに、裁判でもしかしたら対象法令にならないかもし
れないから、それは明確に基準を設けたんだ、定めたんだと言っていただくことは、労働者にとってはありがたい、親切なお気持ちなんですけれども、しかし、
労働者側としては余りそれは求めていないんですね。やはり幅広であった方がいいと思っているんです。
というのは、今回の法律、一番最初の代表質問を思い出していただきたいと思うんで
すね。密告増進法ではないですよ、名前も明らかにして公益にかかわる情報を提供したときに保護されるというものであって、例えば社内で、あの人が来社が遅
いとか、会社のパソコンを使って何かやっているとか、そんな問題を公益通報の対象にするなんて話じゃないわけですよね、当然。公益なんですから。
では、その公益だと信じて通報した、あるいは実際に被害が出ている。これは、この
議論の中でも明らかになりましたが、シックハウスの問題や、現在の六本木ヒルズの問題、法律がないですね。シックハウスはようやく法律が制定されて、それ
までに何千人という患者が出てしまった。今回の六本木ヒルズも、実は、さまざまな省庁に問い合わせをしようと思ったら、まだ法律ができていないので所管が
ありませんなんという話を平気で政府はされているんです。でも、被害者はいるわけですよ。被害者はいるわけです。
そういう状況を考えると、やはり生命、身体、環境に重大な影響を与えるおそれがあ
る事実そのものを含まなければ、これは適切な公益通報にならない、公益の通報にならないというふうに考えますが、大臣、いかがですか。
竹中国務大臣 今、シックハウス等々の例を御提示くださいましたけれども、これはしかし、そうい
う意味での例えば環境基準とか健康安全基準の制度の不備があるということであるならば、まさにそのことこそをやはり問題にするというのが政策的な対応なの
ではないかというふうに思います。これをすべて公益のこの法案の対象の中で見るというのは、これはやはり私は少々無理があるというふうに思います。
今おっしゃったような問題、それは個々に社会の中のいろんな問題があると思いま
す。しかし、それには、それの中での、そのそれぞれの問題についてしっかりと対処していくということが必要なのであって、それと今回の法案とをやはり直接
結びつけて、すべてこの法案で読めるようにというのは、これはなかなか法律のあり方としては困難な問題なのではないかと思います。
その意味では、今回は、とにかく私たちには解雇権の濫用を規制する等々の一般的な
法理がある、その上に成り立って、特にこうした分野については明確に基準を示すことによって予見可能性を高めて、それでその労働者の権利を守ろうではない
か、利益を保護しようではないか、そういう立場に立っての法案でございますので、その意味では、罰則規定等々がついているようなものについては社会的に一
種の、これはやはり防がなければいけない、ここはやはり公益を守るために防がなければいけないというコンセンサスがあるものであるわけであって、そうした
ものに限定して、それを明確にすることによって予見可能性を高めたいというのが今回の法律の趣旨でございます。
泉健太委員 いや、ですから、そこは、明確にすることによって予見可能性を高めても、それ自体
が何か社会にとって有益なものではないわけですよ。今求められているのは、公益通報をできるだけ幅広にできるようにするということが求められているわけで
すね。
この部分については、ぜひともこれも個人の生命、身体に重大な影響を及ぼすという
ことを入れなければ、実際に法律というのはやはり後追いですから、例えばこの法にしたって、どうあったって公布から施行まで時間をかけなきゃならないわけ
ですよね。その間にも残念ながら被害者というのは出てくる可能性はあるわけです。
何だって法律は後追いなのはよくわかっています。わかっていますから、せめて、一
本一本の法律の後追い、これを繰り返す、そしてその対応を待つというのではなくして、この公益通報者保護法の中で、やはりこういった実際に被害が起こって
いる場合については、公益通報を行うことによって、法律ができるできないじゃなくて、まず被害を食いとめることです。まず被害を食いとめる。そして、その
通報した人間の立場を保護する。
立場の保護は一番最初じゃないですね。まず被害を先に食いとめなきゃならない。被
害を食いとめるためには、だれかからの通報がなければならないわけです。その通報がちゅうちょされるような法律であれば、これは機能しないんです。そこを
ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。これも我々民主党は修正を求めております。
そしてさらに、これまで議論がありましたが、まさに生じようとするとき、これを我
々は「おそれ」ということも含めるべきだというふうに考えておりますけれども、ここも、政府の答弁を見ていますと、何を怖がっているのかなという気がして
ならないんですね。
それは、例えば、「おそれ」にした方が企業にとってもメリットだと私たちは思って
いるんです。早期発見、早期対応ができるわけですから。だって、まず最初に内部通報ありきなんですからね。いきなり外部に、マスコミにすぐばらすみたいな
話じゃなくして、先に内部通報をするわけですから早期発見、早期対応ができる、いいことじゃないか。
「おそれ」というふうにした方が、もしかしたらこんな話があるかもしれませんよ、
気をつけてくださいね、そういうものがヘルプラインに投げ込まれた方が先に手を打てるじゃないですか。その方が会社にとったっていいはずなんです。なのに
もかかわらず、何を恐れているのかなという気がしてなりません。
しかも、今回の法律というのは、実名の公益通報に対してその方そのものを保護する
ということですから、匿名の通報ではないということですから、その実名の通報があった方に対して期限内に返答をすればいいわけですよね。そうしたら、企業
としてはさほど、前おっしゃられたような事業者のリスクだとかそんなことはないわけです。明確にわかっている人に対して返答をすればいいんですから、さほ
ど難しい話じゃない。とすると、何を恐れているのか。
例えばそれは濫用ということを恐れられているのか。内部通報が同じ人から何十件も
何百件も来て、会社の本来業務ができないというような濫用を恐れておられるのか。それとも、その濫用によってヘルプラインが煩雑化、業務が停滞することを
恐れているのか。
それとも、安易に外部通報される可能性があるということ、またそれに伴う企業リス
クを恐れられているのか。あるいは、外部機関、例えばマスコミとかがモラルが低いから何でもばらしてしまう、そういう風評リスクを恐れられているのか。こ
このところを明確にしていただきたいと思います。いかがですか。
伊藤副大臣 委員からも今さまざまな御指摘がございました。また、この点については、パブリッ
クコメントにおいても、この「生ずるおそれ」の表現についていろいろ御意見がございまして、その中で、当事者間の事実認識の相違を生む可能性がある、ある
いは、通報によって事業者に損害が発生した場合に、おそれの蓋然性をめぐって争いとなる可能性がある、こうした意見が出てきたわけであります。
私どもとしましては、こうした意見を踏まえて慎重に検討した結果、やはり規定ぶり
を明確化するために、「まさに生じようとしている」に修正をさせていただいたということでございます。
泉健太委員 先ほどから、明確化、明確化という話がありますが、明確化すると何がいいんです
か。
伊藤副大臣 一番重要な点は、その事実認識の差が生じないようにしていくということが重要な点
であるということは御理解をいただけるんではないかというふうに思っております。
私どもとしましては、今回の法律の解釈に関連をして労働者と事業者の間に事実認識
の差が生じてしまいますと、例えば労働者が本法の保護要件に満たしていると考えて通報した場合であっても、事業者は満たしていないと考えて当該労働者を解
雇する、こういったことが考えられるわけであります。
この場合に、裁判の結果、労働者側が敗訴する場合も考えられるほか、例えば最終的
に裁判所で当該解雇は無効とされても、裁判が終了するまでの間は当該労働者は不安定な立場に置かれることになるわけでありますから、結果として、通報者保
護の制度としてはやはり十分なものではないというふうに考えられるところがございます。
こうしたことから、労働者と事業者との間の事実認識の差を極力生じさせないように
していく、そうした制度を構築していかなければいけないと考えたところでございます。
泉健太委員 もしかしたら、明らかになってきたかもしれないですね。
労働者は解雇や敗訴をこれまで怖がっていたと思いますよ。怖がっていたと思います
けれども、内部通報をした人たちはどういう思いか。僕は大臣にもお伺いしたことがありますけれども、公益通報をした人というのは、それでも公益通報が大切
だから通報するわけですよ。敗訴とか自分の立場とか、もうそんなものをなげうってでも社会を何とかしなきゃならないと思うから通報するわけですよ。間違っ
ているんじゃないですか、そこを。
労働者が、自分の言ったことが対象法令じゃないから、あるいは、まさに生じようと
していないから、おそれ等の関連で該当しないから、もちろんそういう労働者もいるかもしれませんけれども、しかし、本当に公益通報をしようとしている人
は、こういうことを怖がっていては公益通報できないわけですよ。現に公益通報してきた人たちというのは、今、何にも法律がない状況でも、一生懸命勇気を振
り絞って公益通報したわけですよ。
敗訴や対象法令で関係ないかもしれないから、あるいはその間は労働者の立場が不安
定になるから、そういう理由で考えられているのであれば、例えば労働関係の団体からそういう御意見を出していただいて、私たちはその件に関しては心配をし
ていませんというような話であれば、そういうふうに修正をしていただけますか。
伊藤副大臣 重ねての答弁になりますが、やはり私どもとして大切なことは、本法の解釈に関連を
して事実認識に差が生じないようにしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
そのために、私どもとしての努力としても、事前に相談できるような窓口というもの
を整備していく、そうしたことに努めるとともに、労働審判手続などの個別の労働関係に関する紛争解決の仕組みや、あるいは相談機関を利用することが可能で
ある、こうしたことも十分周知をして、そして、本法の枠組みというものが機能できるように努力をしていきたいと考えておるところでございます。
泉健太委員 事実認識に差が生じたっていいんですよ。差が生じて何がまずいんですか。差が生じ
るのは当たり前じゃないですか、違う人間同士なんですから。何で差が生じないようにしなきゃならないんですか。時には、いろいろな意図的な思いもあって、
あえて差が生じることだってあるじゃないですか。なぜ、差が生じてはいけないんですか。
伊藤副大臣 先ほども答弁をさせていただいたように、差が生じることによって労働者の側にやは
り不利益が生じるケースも考えられるわけであります。ですから、そうしたことにも私どもとしては思いをはせて、そしてこうした差が生じないような制度を極
力講じていく、そうしたことが非常に重要ではないか、そうした考え方から本制度を構築させていただいたというところでございます。
泉健太委員 わかりました。もう余り時間もありませんので、ぜひ、ここのところも我々は非常に
注目をしてこれまでに取り組んできたところです。まさに生じようとしているときではカバーできない実例というものもたくさんあるんだと思います。
例えば六本木ヒルズのことで言ってみれば、一番最初の設計段階で回転ドアの問題に
ついて気づいた、それをもってまさに生じるとするのか。それとも、一件何か被害が起こった時点で、これがまさに生じようとしているときと見るのか。それと
も数件起きた段階で、これは生命、身体に被害が起きるという確信をした時点でそういうものになるのか。非常にあいまいですよね。
どのみちこういう判断にかかわるものというのは、意見の相違、見解の相違があって
当たり前なんです。だから、それを理由にして、明確化をする、そして明確化をするから限定をするということでは、公益通報を抑制してしまうということにな
るんだというふうに思います。
次に行きますけれども、この議論をしていく中で一つ気になったことがありました。
この内閣委員会では、小野大臣に来ていただいて、警察関係の不祥事についてもこれ
までずっと取り組みをしてまいりました。残念なことに、委員会としてしっかりと議論の中で要求をした文書保全が十件近くなされずに廃棄をされてしまった。
わざわざ、大臣から会計課長に行き、会計課長から全国の警察に要求をした文書保全がなされなかったという事態がありましたけれども、この文書保全に関して
お伺いをしたいというふうに思います。
これまで、行政関係の文書保全のさまざまな訓令、規定というものがあると思うんで
すが、訴訟にかかわるものは期間を過ぎても保全をしますということになっております。しかし、こ
ういう公益通報の証拠になるような文書について、保全の対象としていただけるかどうか、これは一つ大きな問題だと思うんですね。
公益通報をしました、しかし、全部証拠隠滅されてしまったということでは、結局
は、証拠がないんだから君の言ったことは公益通報じゃないよ、では、君は問題行動を起こしたから解雇だねということになりかねないわけなんです。
そこで、まず警察庁さんの方に、この件に関して今どのように対応されているか、お
伺いしたいと思います。
吉村政府参考人 文書の保存期間の延長についてのお尋ねかと思いますが、警察庁における文書の取り
扱いにつきましては、警察庁における文書の管理に関する訓令にのっとって行っているところであります。
この規定によりますと、保存期間の延長については、文書管理者たる警察庁の課長等
が、現に監査、検査等の対象になっているものについては当該監査、検査等が終了するまでの間保存期間を延長、また、職務の遂行上必要があると認めるときは
一定の期間を定めて保存期間を延長することができるという定めがございます。
いずれにせよ、公益通報者
保護法案に基づく通報に関連する文書の取り扱いにつきましては、法案の成立後に、内閣府その他の関係省庁と連携をしながら検討してまいりたいと思っており
ます。
泉健太委員 内閣府さん、きょう来られておりますね。
内閣府の方では、この文書に関しては、公益通報にかか
わる文書を今後どのようにされていくおつもりでしょうか。
永谷政府参考人 私どもの文書管理規則の規
定で、通報のあった情報にかかわる文書の保存期間、一応原則として五年間として、例外を認めることについて正当な理由がある場合にはその保存期間を延長す
ることもあり得るとしているところであります。
したがいまして、当初寄せられた情報にかかわる文書の保
存期間の五年が迫っていたとしても、それに関連する情報が寄せられた場合、保存期間を延長することもあり得るというふうに考えておりまして、それはこの法
律の施行後も同様であるというふうに思っております。
泉健太委員 これは各省庁、訓令なり規定なりで出されていると思います。ここについては、確か
に、幾つか項目を挙げている以外に、もし何か必要があれば保全をするように、延長するようにということが書いてありますけれども、大臣、ここはぜひ、そう
いう弱いものではなくて、これは今回公務員も対象者になっているわけですから、公務員から公益通報があった、まあ内閣府も金融庁も現在では実名の庁内の人
間からの通報はゼロということで私はホームページで確認をしておりますけれども、金融庁はゼロじゃないですか、ゼロですね。まあ、いろいろな意味で公益通
報はまだしにくい状況なんだろうな。
例えば、香川県では匿名通報でもいいと言っているにもかかわらず、内閣府は実名で
書けとか、非常にヘルプラインとしてはまだおぼつかない状況ではないのかなということも思うわけですが、そういった行政内部からの公益通報があったとき
に、やはりちゃんと一つ項目を設けて、公益通報があった場合には関係資料はその公益通報が処理されるまで保全をされるということ、ぜひともこれは入れてい
ただきたいと思います。
そうでなければ、先ほど言ったような、証拠がないから君の言ったことは間違いだ
よ、だから保護しないよということになりかねないというふうに思っております。その意味では、この点もぜひ修正の中に含めていただきたいと思います。
それ以外にも我が党はいろいろと、九条、十条関係でも、努力義務を義務規定にすべ
きだ、あるいは見直し期間を五年から三年にすべきだ、いろいろなことを今回要求させていただきましたが、審議会の議論を経て、さらにこの委員会での議論を
経て、いい案をまず出す。
さらに修正も今後していくということだと思いますので、ぜひこの我々の出した修正
案に基づいてさらに御協議をいただいて、真摯に受けとめていただいて、この公益通報者の声、そして被害に遭われている方々、被害者の声、ぜひそういったも
のをしっかりと聞いて、この法案、おつくりをいただきたいというふうに思います。
以上で失礼いたします。どうもありがとうございました。
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