衆議院内閣委員会
平成17年10月19日(水)
中国に遺棄された化学兵器の問題について
答弁者
国務大臣(内閣官房長官)
細田博之君
政府参考人(内閣府遺棄化学兵器処理担当室 長)
高松明君
政府参考人(外務省大臣官房参事官)
梅田邦夫君
政府参考人(外務省総合外交政策局軍縮不拡 散・科学部長)
中根猛君
佐藤委員長
次に、泉健太君。
時間内で御質問願います。
泉委員
民主党の泉健太でございます。
きょうは、内閣府には遺棄化学兵器処理担当室というものがございます。この遺棄化学兵器処理担当室というのは、いわゆるさきの大戦で、日本軍が主に中国 大陸に遺棄をしたと言われております化学兵器、いわゆる毒ガス兵器、この兵器を処理する担当という部屋がございまして、きょうはこのことについて質問をさ せていただきたいというふうに思っております。
これは、我々の旧軍が使用していた、あるいは持ち込んだ化学兵器が、当時いろいろな時代背景があって、これは後でお伺いをしたいと思うんですが、いまだ に現地に残されているという実情があるというわけでございます。
これは、いろいろな調査の報告等がありまして、中国側はその総量は二百万発だという話もあれば、我々日本側としては七十万発だという論もあり、最新の調 査では三十万発だというような話もあって、この事業費も、この約六十年間埋まっていた化学兵器の処理というのは大変難しい技術が、あるいは先進事例がない ものですから、必要でして、そういった中でいいますと、事業費は総額一兆円にもなるのではないかというような話もされております。
現に平成十一年からは、既にもう我が国の予算を一千億円ほど消化をしているという状況もございまして、今後この事業がどのように進展をするのか、非常に 注目をしているところであります。
そういった中で、まずは事実確認をさせていただきたいと思っておりまして、諸説あるわけです。中国政府が二百万発の日本軍が遺棄した砲弾があると言い、 我が国は三十万ないしは七十万と言っている。
まず、官房長官にお伺いしたいんですが、我が国の公式な見解として、現状として推定をされている現地に残された砲弾の総数、これは何発だというふうに御 認識でしょうか。
細田国務大臣
我が国は、化学兵器禁止条 約の規定に従いまして、一九九七年、化学兵器禁止機関に対しまして、それまでの現地調査を通じて判明した事実に基づきまして、遺棄化学兵器として中国に残 置されている化学兵器は約七十万発あり、そのうち六十七万発余りが吉林省のハルバ嶺にある等の申告を行っております。
ただ、さまざまな地点で新たに発見される場合もありますし、旧日本軍の中国全土における活動等も不明な点も多いわけですから、我が国としては、あくまで も日中の双方の覚書、これはいわゆる化学兵器の開発、生産、貯蔵、使用の禁止並びに廃棄に関する条約に基づいて、我が国がこの廃棄について誠実に履行する という国際約束をしておりますし、まさに旧陸軍の責任であるという観点から、この化学兵器の処理に対する責任を持って取り組んでおるわけでございます。
泉委員
国会質問というのはなかなか言っ たことに率直な答えが返ってこないものですが、今答弁の中で唯一あった数字は七十万という数だったわけですが、それが現在の見解ということでよろしいんで すか。
高松政府参考人
お答え申し上げます。
今、ただいまの官房長官の方からお答えしました調査の後に、二〇〇二年にハルバ嶺におきまして日中共同で砲弾埋設地の探査を行っております。その際の結 果を踏まえまして、私どもとしては、砲弾埋設数は三十万発から四十万発であると推定しているところでございます。
泉委員
大臣、これはまずいんじゃないで すか、今のは。大臣が七十万と言って、こっちの担当の方が三十万から四十万とおっしゃられている。これは、済みません、どっちなんですか、大臣。
細田国務大臣
当時の日本の申告は、六十 七万発余りであるということを申告したわけでございます。
それから、ハルバ嶺における実際上の確認された、まあ、推定値でありまして未確認なんですが、三、四十万発ではなかろうか。というのは、全く埋まって おっていじることすら危ない状況で、土中にあるわけですから、それを掘り出して、本当に何万発あるかというところは推定にすぎないわけです。
したがって、私が先ほど言った後の方の答弁が大事なんであって、何万発あるかという事実は必ずしも明確でないから、日本としてはそれが何万発であれ、こ れに取り組む、処理に取り組む責務を負っていると理解している、そこが大事なんでございます。何万発という数字の問題ではない。
泉委員
いや、とはいえ、やはり最新の調 査で前回の調査よりも数が減っていることが予想されるということを、やはり一部では出ているわけですね、三十万から四十万と。
これは、三十万から四十万にしたって十万発の開きがあるわけですから、私も下一けたまで出せなんてことを言っていないわけでして、ただ、政府としてどの 数字を今持っているのか、これを私はある程度ははっきりさせるべきだというふうに思っているんです。最新の調査の結果としては三十万から四十万だというの であれば、それはやはり示さなきゃならないですよ。
私は、なぜこんなことを言うかといいますと、この担当室のホームページを見させていただくと、最近の動向というところで、平成十五年四月二十五日の最近 の動向という文章を読むと、第一回の探査よりも減少することが判明したということが書いてあるわけです。
ここに三十万から四十万という数字は書いてありませんが、しかし一方で、平成十六年七月の担当室の「中国遺棄化学兵器問題について」というホームページ の中には、「これまでの現地調査の結果、推定約七十万発の旧日本軍の化学兵器が中国国内に存在するとして、化学兵器禁止機関に対し申告を行った。」と書い てある。
確かに、申告を行った時点は七十万発でいいんでしょう。しかし、その数字を残したまま、政府の機関のホームページにこういう情報が、三十万、四十万とい う数字が出ずに、残っているということは、これは公式見解ととられても仕方がないと私は思うんです。
それをいろいろな市民団体やあるいは中国政府も、やはり公式な我が国の立場としては七十万発という、ここに数字が載っているのはこれが唯一ですから、そ うとしかとらえられない。それで構わないという現状ですか。
高松政府参考人
お答え申し上げます。
私どもとしては、実際上最も蓋然性の高い埋設数は三十万発から四十万発であろうということを考えております。
ただし、これは、先ほども官房長官から御答弁申し上げましたとおり、確定的に確認されている数字ではございませんで、可能性としては、今までの小規模発 掘等の事例をかんがみれば、相当上下の幅があると考えております。
ただ、いろいろハルバ嶺におきましてこれから大きな事業をやっていく際の私どもの現実の想定数としては、三十から四十をとりあえず考えている、こういう 状況でございます。
細田国務大臣
本年十月に、内閣府の江利 川事務次官が武大偉外交部副部長と会談をいたしました。
先方からの発言の中で若干、会談ですから余り先方がどう言ったということを確定的に言うことは望ましくない場合もありますが、これまで十五の省、五十数 カ所で約四十万発が確認されており、最終的にはこれを超えるであろう、これは先方の認識でございます。
したがって、これは土中に埋まっておるということ、戦前、戦時中の軍の活動が中国全土にかなり幅広く及んでおりますから、チチハル等でも出ましたし、 ちょっと近くでも気がつかずに埋まっている例もありますので、余り何万発であることを確定してそれを処理するというまではなかなかいかないということでご ざいますので、御理解をいただきたいと思います。
しかし、何十万発出ても処理できるようなオーダーの処理施設をつくろう、これは処理施設としてはハルバ嶺につくろうということで、建設を進めておること を御理解いただきたいと思います。
泉委員
そこはぜひ精査をお願いしたいと いうふうに思います。そして、もちろん、我が国が遺棄をした化学兵器であれば、それは当然我が国が処理をしなければならない。
ここでちょっと質問の方向を変えたいんですが、中国、当時の国民党軍あるいは共産党軍、どちらでも結構です、そしてあるいはソ連、ここは、この地域で化 学兵器を遺棄したという事実、それは日本政府としては確認をされていますか。
梅田(邦)政府参考人
お答えいたしま す。
日本政府としまして、中国並びに当時のソ連から、遺棄化学兵器を処理した等の確認はできておりません。
以上でございます。
泉委員
そうしますと、日本政府として は、現在中国の大陸で見つかっている化学兵器、遺棄化学兵器については、これはすべて日本製だという認識をお持ちなんでしょうか。それとも、毎回確認、 エックス線の確認になるとは思うんですが、それを確認している、そういうことだということですね。わかりました。
さらにお伺いをしたいんです。
この中国に残された化学兵器の処理ということについては、これはもう一回見解をお伺いしたいんですが、一九七二年の日中共同声明、これをもって戦時賠償 的なものというのは終結をしたということになるわけです。
現在行っている事業というものは、化学兵器禁止条約そして日中間の覚書、この二つがこの事業の実現につながっているというふうに認識をしているわけです けれども、覚書が締結をされたのが九九年なわけです。化学兵器禁止条約を日本が批准をした一九九七年から、この条約に縛られた形で十年間というカウントの 仕方、処理の年限ですが、それと覚書が締結をされたのがたしか九九年だと思うんですが、それからこの事業が実施をされるというふうにこの覚書には書いてい るわけなんですけれども、この条約に基づくと、処理年限は一九九九年から十年間という認識ではないんでしょうか。
中根政府参考人
化学兵器禁止条約の規定 上は、条約が発効してから十年間に廃棄をするということになっておりますので、化学兵器禁止条約の発効は九七年の四月二十九日でございますから、それから 十年間ということでございます。
泉委員
発効しても、相手国、地域、当該 国というんですか、そこがこの条約に入っていなければそれは処理は不可能なわけですよね。中国がこの条約に入ったのは九九年でしたか、そうしますと、とに かく、覚書の時期ではなく、この条約に日本が入ってからが廃棄義務というものが伴っているというような考え方になるんだと思います。
ちょっと、済みません、二十分ではとても足らない質問なので、駆け足で行かなければならないんです、本当はいろいろと確認をしたいところがあるんですけ れども。
実は、こういったいろいろな化学兵器によって中国の一般の住民が被害に遭われているという実態があるわけです。この被害について、日中間では、例えば被 害者の認定というものを行っているのかいないのか、行っているのであれば、それは何名なのか、官房長官、お答えください。
梅田(邦)政府参考人
お答えいたしま す。
日中間では被害者の認定ということは行っておりません。また、被害者の総数につきましても、全体を把握するのは困難な状況でございます。
泉委員
中国側からは、例えばそういった 被害者の確定ということについての要望、申し出、具体的提案があるのかないのか、まずこれが一点。
そして、我が国としては、チチハルで起こった毒ガス被害、これはもう、被害者が来日をして、逢沢外務副大臣にも会って話をしていますけれども、こういっ た被害者に対する協力金ですか、これは引き続き、被害者があって、そしてそれが日本製の毒ガスによるものであるとなった場合には、今後もこういったスキー ムで協力金が支払われることになるんでしょうか。
梅田(邦)政府参考人
お答えいたしま す。
中国側から何らかの要望があったかどうかにつきましては、要望がないということでございます。
それから、協力費等につきましては、御承知のとおり、我が国の立場は、請求権の問題につきましては、七二年の国交正常化の時点で解決されておるという立 場でございますので、その趣旨を踏まえて今後とも対応していかざるを得ないというふうに考えております。
以上でございます。
泉委員
ですから、その協力金というもの は、既に一度出されているわけですね。もちろん、個人補償はできないという前提に基づきながら、それぞれの政府間でやりとりをするということになると思う んですが、二〇〇五年の九月二十七日に、被害者の方々あるいは代理人の弁護士の方が外務省の方と交渉を行っております。
そういった中で、実は遺棄化学兵器の処理事業基本計画書というのがあるわけですが、その中に、現地医療体制というものがございます。もちろん、当然、危 険な作業ですから、現地の要員の医療支援というものはしっかり行っていかなければならない。緊急、もし毒ガスを浴びた場合に、その救済を、救援、救助、そ して医療体制をつくっていかなきゃならないということになっているわけですが、この事業そのものは非常に事例が少ない事業ということでありますから、私 は、あらかじめいろいろな毒ガス被害におけるデータというものを集めながら、医療体制に生かしていくべきじゃないのかなというふうに思っております。
その意味で、もう既に現地で被害に遭われてしまっている方々が多いわけですが、彼らには中国政府からは一時金という形でお金が渡されているようなんです けれども、そうではなくて、例えば、我が国としては、そういった被害者の方々の健康被害、そのデータ収集という形でこういった方々の実態調査を行う。それ はイコール健診ですとか、ある程度の医療ケアも含まれるわけですが、名目としては、我が国としてはやはりデータ収集ということを重点に置いた形でこの被害 者に対してもしっかりとケア、アプローチを行っていくべきではないかというふうに考えているわけですが、大臣、そこはいかがでしょうか。
細田国務大臣
これは双方の条約上の問題 といいますか、請求権についての問題、それから、事実上、うっかりどこか穴を掘ってみたらそこに兵器があったということで死者が出たり、あるいはやけどを 負われたりする方がおられる、こういう問題とをどのように一つ一つ解決していくかというときに、チチハルのような例ではそれなりの両国間での話し合いが行 われるという形をとっておるものと承知しております。
しかしながら、当然ながら、この条約に基づく遺棄化学兵器の廃棄処理については全面的な責任を負っているわけですから、例えばハルバ嶺で実際の発掘処理 をする段階で、万一のことがないようにするんですが、医療的な問題等は責任を持って対処するということにしておるわけでございます。
泉委員
もうこれで最後にしますけれど も、私からの要望としては、やはりこういった危険な作業に従事する上では、いろいろな医療のデータ、これを事前に集めておく必要があるというふうに思いま す。
その意味では、この外務省と代理人の弁護士とのやりとりの中では、こういったデータ収集という観点であれば内閣府主導であるというような発言も外務省の 方からなされているようですし、医療ケアの問題であっても、それは内閣府の担当になるであろうということでお話があったようです。
ここはぜひ、押しつけ合いということではなくして、やはりこういった、現に、要員だけではなく、一般の方々の被害が既に出ている。しかも、それはやはり 日本政府、旧日本軍の化学兵器によるものだということで、人道的な観点からも、即時に、なるべく早い時期にこの被害者の医療データの収集ということをぜひ とも行っていただきたいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
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