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衆議院内閣委員会

平成18年1月19日(木)

警察官の救命訓練について

答弁者
国家公安委員会委員長 沓掛哲男君


佐藤委員長 次に、泉健太君。

泉委員 本日二度目という形になるんで しょうか、質問をまたさせていただきたいと思います。
 官房長官にはお越しをいただいているんですが、この十五分間の間では官房長官に対する質問はございません。申しわけございません。主に公安委員長の方に 質問させていただきたいというふうに思っております。
 きょうは子供の安全という質疑になるわけですけれども、その中で、警察官の皆さんは、日夜本当に努力をされております。新聞の記事にならない日常の警備 あるいは警察活動の中で、さまざまな人命を救助したり、そういった事例は枚挙にいとまがないわけですし、そういった警察官の皆様には大変敬意を表したいと いうふうに私は思っておるわけですが、一方で、きょう取り上げますのは、皆さんにもぜひ聞いていただきたい事例の一つであります。
 実は昨年の後半、さまざまな事件、事故がございまして、福岡県の豊前市というところで交通事故がございました。このときに、実は警察官が現場にいち早く 到着をしたわけなんですが、その警察官が、その被害者というか負傷者の意識を確認し、かつ脈を調べたけれども、その後に、本来、救急救命では基礎の基礎と される気道の確保ということをしないまま、現場の整理あるいは加害者の身柄の確保、これまた確かに重要なんですが、そちらの方に力を注いでしまった。結果 と言っていいのかどうかわかりませんが、この事故では交通死亡事故という形になりまして、救助をしたことによって人命が救われたかどうかはわからないとい うところはつくわけですが、しかし、警察官の救急救命能力ということについて、あるいは危機管理対応ということについて、実は地元でも大きく報じられてい た、そういう事態がございました。
 そしてまた、同じく北九州市の方では、七十歳の男性が自宅で倒れ意識不明になっているのを妻が発見した、とっさに一一〇番をしたが、到着した警察官は、 妻への事情聴取と救急車の出動要請をしたのみで、人工呼吸や心臓マッサージなど救命措置は一切しなかった、これまたこういった事例がございまして、残念な がら、救急車が到着するまで六分以上かかり、男性は病院に搬送されたが死亡したという結果になっております。
 よく、心停止から何も処置を施さなければ三分間で半数は死に至ってしまうというふうにも言われているわけでして、そういった意味では、現場にいる一般市 民も含めて、現場に到着した者、現場に存在する者がいち早くその被害者、負傷者を救命する、処置をする、対応するということが大変重要だということは、こ れはだれの目から見ても私は明らかだというふうに思っておりますし、その中でも、やはり職務としてこういった立場にある警察官、現場の、まさにその被害者 にも近寄って、交通整理も含めて現場の整理をできる警察官にはこういった能力は求められている、不可欠なものだと私は思っておりますが、そういった中で、 今、この警察官の救急救命ということについてどうも余り力が入れられていないんじゃないのかなということを感じざるを得ません。
 公安委員長、警察における救急救命の能力の育成、これについて、どうなっているか現状をお答えいただきたいと思います。

沓掛国務大臣 被害者の救命措置というの は、一刻を争う大変重要なことでもございます。そこで、警察官がどの程度の救命的な技術、そういうものを持っているかということも大変重要なことではござ いますが、まず、警察官は、その職務の性質上、事件、事故の現場に最初に駆けつける機会が多いことでもあり、当然、一義的な救命措置を講じることができる ように、警察学校において基礎的な救急法の教育、約四十時間でございますが、教育を実施しているものと承知しております。
 また、各都道府県警察におきましては、警察学校を卒業した警察官に対して、勤務しているその所属等の場所において、救急法に関する部内の検定に合格した 指導者やあるいは部外の専門家による講習も行っているところであります。
 そういうふうにしながら警察官の救命措置に関する教育を継続実施しているというのが現状でございます。

泉委員 そういう現状があるんですが、こ の事故を機会に、ある新聞社が全国の都道府県警に調査をいたしました。そうしますと、いろいろな御回答があったわけです。確かに、今委員長おっしゃったよ うな取り組みをされているところがほとんどなんですが、実は、それでは足りないという認識を私は持っております。
 どんな答えがあったかというと、まず、警察官の任務の第一は事件、事故の被害拡大を防ぐことにある、人命救助の訓練はしているが、組織として救急法の取 得を徹底するのはおかしいとした県警本部もあった。救急法の取得というのは資格、赤十字ですとか消防から資格を取得するというところまで徹底はできないと いうようなお答えだったり、あるいは、警察学校で当初はやるけれども、一度警察官になってしまえば、基本的にはそれは各署、各都道府県警に完全にゆだねら れていて、どこでいつどんな研修を受けたかということについてはそれ以降全く報告する義務もないという県警がほとんど、もうほぼ半数以上ですね、八割方そ ういった状況になっているという状況でございます。
 こういった状況でありますと、その資質というものが、当初は学校の方でしっかりと学んでも、もちろん知識ですからどんどんこれは忘れるわけですね、そし てまた現場で役に立たなくなってしまうケースもあるということで、まず一つお伺いをしたいのは、警察官の職務、責務の中において、この人命救助というもの は一義的なものだ、それとも、やはり警察官の第一の任務は、事件、事故の被害拡大を防ぐ、あるいは捜査をする、そういったことが一番なのか、それをぜひ、 委員長、お聞かせください。

沓掛国務大臣 何としても警察官の第一の 任務は、国民の生命、身体、財産を守ることがこれは一番でございます。そういう中で、犯罪、そういうものを防止していくということが警察官の基本的な職務 というふうに考えております。

泉委員 そうしますと、先ほど福岡の交通 事故の件を言いましたが、こういった場合においては、やはり人命救助を第一優先をし、かつ、事件の捜査に資するために行動するということが警察官のスタン スという考えでよろしいでしょうか。

沓掛国務大臣 まず、今も御指摘のありま したように、警察官としては、そういう人命、財産を守るための、特に生命を守るためには、ある程度そういう被害者に対する対応をするための技術が必要でご ざいますが、これは警察官二十四万人いるわけでございまして、今申しましたように、一応四十時間という基本的な教育はしておりますが、全体としての水準と いうのは必ずしもそんなに高いわけではございませんし、救急救命士の資格を取るようなためには、これは二年ほど教育を受け、さらにいろいろな研修なども必 要で、その上で国家試験に合格するというようなかなりの高い技術を要求するものでもございます。
 そこで、警察官としては、まず、そういう場合においては一一九番に通報いたしまして、救急隊の派遣を要請し、そこにおいて救急救命士等の資格のある方に 対応していただくというのがまず一つの方法であり、十分そこに、どういう状態であるかにも非常によるんだと思いますが、生命に関するようなことであります と、また何かを間違ったというか、反対のことをすればまたいろいろな問題もあるので、そういう状況も勘案しながら、一番最善の方法は何かを考えながら対応 しているものというふうに承知いたしております。

泉委員 どうですかね、これはちょっとま ずいんじゃないのかなというふうに私は思いますよ。委員長、ここは今回初めて指摘する問題でしょうから、ぜひ勉強していただきたいんですが、まず一つ、私 はまだ救急救命士の話はしておりません、この後にしようと思っていた話ですが。
 そうではなくても、今おっしゃったように、もし、救急隊に要請をする、それはいいでしょう、それは当たり前のことです。しかし、それを待っているような 状況であれば、やはり人の生命というのは、特に何か事態の変化、状況の変化が起こってからすぐに対応することというのが、これは人命救助あるいは後遺症を 残さないために非常に重要なんですね。そう考えると、待ってはおられないんです。もしも、今おっしゃったように、何か間違いが起こったら困るから警察官が やらないなんということだったら、これは警察官の職務として私は大間違いだと思います。そこはぜひ今言ったことを改めていただきたいと思います。
 時間がありませんから具体的なことを話しますけれども、例えば警察官の訓令というのがございます。昭和二十九年にこの警察官の訓令というのがあるわけで すけれども、「逮捕術、けん銃操法及び救急法は、警察官の職務を適正に遂行するために必要な技能であり、」ということが書いてあります。
 ですから、逮捕術、けん銃操法と同等にこの救急法というものが本来並んでいて扱われているわけですね。それは、先ほどおっしゃられたように、警察法の二 条で、警察官はまず個人の生命財産を保護するというところからこれがきているわけです。
 では、委員長にお伺いしたいんですが、剣道大会、けん銃大会、これは全国都道府県警やっていますね。救助大会、救助技能大会、これは聞いたことございま すか。

沓掛国務大臣 災害救助対策の中でいろい ろな訓練等もやっているということでございます。
 確かに、先ほど申し上げましたのは、先ほど実例をお挙げになりましたので、そのことで申し上げたんですが、警察官自体がいろいろな現場で人命救助のため に貢献したという例はたくさんあるわけでございまして、私の石川県のところにおきましても、ある程度意識を失っている、そういう状態の人に対して警察官が 対応するとか、いろいろなことはもちろんやっているので、先ほど申し上げた例は、先ほどの委員の例が挙げられましたので、それに対するところを申し上げた わけです。
 以上でございます。

泉委員 ぜひ全国の都道府県で、やはりこ うして本来救急というのは同列の扱いを受けているにもかかわらず、ほとんどこの技能の再教育というものが行われておりません。
 私がなぜこういうことを言うかといいますと、私は、実は赤十字の救急員の養成講習を受けて、一時期指導員の資格もいただいておりました。しかし、これは 三年間の有効期限がございます。なぜかといえば、当然それを引き続き訓練を行っていかなければ、最新の技術もわからないし、知識はどんどん失われていく一 方なんですね。だからこそ三年間という期限がある。
 しかし、残念ながら、警察学校の方は一度学べば基本的にはそこで終わりという警察官がほとんどでございます。ですから、例えば、現場で警らをしていた、 何か事件、事故が起こった、そのときには、もう対応しようにも受けたのは何十年前だし、そんな現場の警察官の方がたくさんおられるというのが現実なんで す。やはりこれは私は変えられる話だなというふうに思うわけですね。
 ですから、今、各都道府県で独自に取り組みをされておられると思いますということで推測の域を脱し得ないような状況では、実際に助けられている事例を私 もたくさん知っているんですよ、ですから、一番最初に申し上げた、そういう方々には敬意を表したいけれども、やはり、警察官の責務として一番最初に出てく るのが救急救命、これも同列であり、そして、またその技能は全国の警察官がいつどこでも発揮できるような状況でなければならない、これが私の提案であり要 望でございます。
 ですから、ぜひこの講習については、特に外部との交流ということも大切だと思いますので、消防庁やあるいは赤十字と連携をして、各都道府県の訓練につい てさらに徹底をしていただきたいというふうに思っております。そしてまた、一度だけの教育ではなく、二度、三度とこの教育をしていただけるようにお願いを したいと思います。
 最後になりますが、ちょうど国会が閉会をしてしまいましたので、その直後でしたけれども、京都でサミットが行われまして、約五千八百人の警察官の皆さん が近隣からも含めて集まって警備をされました。その警備も本当に滞りなく終わりまして、非常に一生懸命、京都府警並びに近隣都道府県警の皆さんが頑張って くださいました。そういった皆さんが、やはり一度、二度大きな問題があって信頼を落としてしまったりすることがあるかもしれないと考えると、私はやはり胸 が痛む思いです。
 そういった意味からも、やはり目の前で救助ができないというような警察官がいれば、それは警察官にもとる行為だというぐらいの認識を持って、ぜひこの救 急救命についてはこれから取り組んでいただきたいということを要望して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
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