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衆議院本会議

平成18年4月13日(木) 

消費者団体訴訟法案について

答弁者

国 務大臣(少子化・男女共同参画担当) 猪口邦子君


泉健太君 民主党の泉健太でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、また、全国で消費者被害に遭い、つらく苦しい思いをしている幾多の国民を代表いたしまして、ただいま議 題となりました消費者契約法の一部を改正する法律案の政府案並びに民主党案に対し質問をいたします。(拍手)

 皆さん、消費者被害の実態は御存じでしょうか。賃貸物件の敷金や大学の入学金などを返還しない条項を盾にした契約条項トラブル、英会話、絵画、悪質訪問 販売などの勧誘商法トラブル、架空請求や欠陥商品販売などの詐欺商法トラブル、二〇〇四年度の全国の消費生活センターへの相談は百九十二万件。何と十年前 の八倍にも上っています。また、最近の傾向として、一つの業者が社名を変え、営業エリアを変え、悪質な契約行為が繰り返されるという被害、インターネット によって全国各地で一気に被害が拡大するケースが多発をしており、新たな対応が早急に必要です。

 私たち国会議員は、今、この数を統計資料として片づけるのではなく、その一つ一つに悲劇があり、国民の人間不信、社会不信が増幅していることを忘れては なりません。

 あらゆるものを疑い怪しむ社会、これが政府の目指す健全な社会でしょうか。なぜこのような社会になったのか。大臣、この社会がおかしいと思いませんか。 教育を含めたこれまでの政治に責任はないでしょうか。ちゃんとした解決策を示すのが政治の責任ではないでしょうか。まず大臣、これらの点についてお答えく ださい。

 そして、本日この解決案を本会議で議論し、今後は委員会で議論がなされます。その中で、とりわけ巨大与党、自民党、公明党の役割、そしてこの政府案を作 成した政府は、役割と同時に責任もまた大きいことを御認識ください。

 さて、今回の消費者契約法の改正とは、消費者被害を防止するとともに、消費者被害に遭った個人にかわって一定の適格性を持った消費者団体に訴訟権を与 え、消費者保護と救済を図ろうという新しい仕組みです。

 私は今から、政府案に対し問題点を指摘するとともに、同時に提出をされた民主党案に対して質問をしたいと思います。

 まず、共通認識の部分ですが、被害を受けた一人一人の消費者であっても、業者を相手取り訴えを起こすことには幾つかのハードルがあります。

 まず一つ、被害額が裁判を起こすには割に合わない金額であり、結果的に被害者が泣き寝入りをするケース。第二に、被害者が訴訟に関する専門的知識や十分 な資金に乏しく、また訴訟を起こすには時間的、精神的負担も大きいということ。第三に、被害者個人が裁判での立証責任を果たすことは非常に困難であるとい うこと。こういったことが大変ハードルをつくっております。

 消費者と事業者は本来対等な立場であるはずですが、実際には、消費者と事業者には情報力、交渉力などにおいて格段の差が存在をします。その意味で、消費 者を保護する実効性のある仕組みをつくることが求められていることは、政府案、民主党案の共通の認識であると思います。

 しかし、その共通認識を持つはずの両案ですが、今回提出された法案のうち、なぜか政府案には、大事な大事なところに五つもの穴があいております。

 まず一つ、個々の消費者の受ける被害の一番は、当然金銭的な被害です。なのに今回、政府案では損害賠償請求権がありません。販売差しとめ請求権のみが規 定をされています。消費者団体と被害者、国民が本音で願っているのは、民主党案に書かれている損害賠償請求権じゃないでしょうか。大臣、いかがでしょう か。

 これまでの消費者被害では、勇気ある、そして熱意ある被害者がみずから声を上げ、時間や資金などの労力を割いて、被害者の会を結成し、血のにじむような 努力で長期に及ぶ裁判を続けてきて初めて、損害賠償を獲得するなど被害者救済が図られていました。その中では、弁護士の多くも手弁当で訴訟を手伝うことも 多々あったのは周知のことです。それでは被害を防ぐことはできないということで、今回の消費者契約法の改正が議論をされているのです。

 金銭の被害実態があるのに、適格消費者団体は販売差しとめの訴えだけで、損害賠償の訴えはできない、これが現在の政府案なのです。これでは悪質業者にや り得を許してしまうことにはならないでしょうか。これでは被害者の救済に消極的だと言わざるを得ません。大臣、なぜ、何ゆえこんな消極的な案にしたのか、 お答えください。(拍手)

 初めての団体訴権の導入だから、総合的に考え、そういう答弁は要りません。この法律を今回成立させたければ損害賠償請求権の盛り込みは無理と、審議会や 各検討委員会などで、政府はそんな暗黙のメッセージを消費者団体や学識者に送ってきたんじゃないでしょうか。きょうのこの審議を多くの関係者が見ておりま す。その前で、この疑念に対して大臣の答弁をお願いいたします。

 そして、今国会では、犯罪収益吐き出し法案も審議をされると思います。今や、悪質業者による被害をストップさせるだけで喜んでいる時代ではないはずで す。被害者の保護のみならず救済、悪質業者への制裁という意味からも、当然、損害賠償等請求権が盛り込まれるべきと考えますが、いかがでしょうか。今後、 検討の用意があるかも含め、大臣の答弁をお願いいたします。

 これに対して、民主党案では、損害賠償請求権を盛り込み、消費者被害の救済の実効性を確保しております。民主党提案者に、なぜこれを盛り込むこととした のか、なぜ政府案では不可能なのか、答弁を求めます。また、損害賠償等請求権によって具体的にどんな消費者被害が救済されると考えているか、提案者の御答 弁をお願いいたします。

 次に、二つ目です。

 消費者にかわって訴訟を起こすこととなる適格消費者団体についてです。消費者にとっては、業者に裁判を起こすということは日常生活において大ごとだと思 います。また、消費者団体にアクセスをするということも、実はなかなかできないことではないでしょうか。その意味では、さきの相談件数も氷山の一角かもし れません。

 だからこそ、消費者にとって、まず消費者団体が身近な団体でなければなりません。しかし、その適格消費者団体が政府案では認定制、かつ認定更新は三年ご ととなっており、政府が現在予想する適格消費者団体数は最大で全国やっと九カ所です。これではアクセス障壁が高過ぎます。さらに、これでは遠方での訴訟に も対応しなければならず、消費者団体は資金面でも組織維持に大変苦労を強いられます。民主党案では登録制であり、登録更新は五年ごと、国及び地方公共団体 による必要な資金の確保も盛り込みました。民主党案であれば、恐らく、全都道府県で適格消費者団体が立ち上がり、消費者のニーズにもこたえられる、そして また適格消費者団体の安定した運営も確保されると思いますが、政府案には資金的な支援もございません。このような要件を設定した理由を、大臣、そして民主 党提案者にお答えをお願いいたします。

 そして、大臣、訴訟とは準備から判決に至るまで長期を要します。特に、この消費者団体訴訟制度においては、違法行為を発見し、事例を集めるなど、訴訟に は十分な準備が必要と考えられます。政府案では、一たん判決が出ると後の同様の訴訟が遮断をされてしまうということからも、十分慎重な訴訟準備が必要で す。その意味で、政府案の認定有効期間三年では、同一の案件を扱っている間に認定が切れかねません。せめて有効期間を五年とすべきと考えますが、大臣、い かがでしょうか。

 次に、三つ目でございます。

 政府案では、差しとめ請求の対象行為を随分狭く規定しています。消費者契約法に規定する不当な勧誘等の行為、消費者を不当に害する契約条項の使用のみ。 しかし、消費者が差しとめ請求をしてほしいのは、消費者契約法違反にとどまるものではありません。

 例えば、敷金を全額返済しないと書いた不動産契約書のひな形の使用を推奨する、いわゆる推奨行為、また民法での詐欺や強迫に該当する事案、そして民法九 十条の公序良俗違反も含めるべきと多くの消費者団体からの強い要望があります。これは、先送りをすることなく、今この時点で法案に盛り込むべきと考えます が、大臣、いかがでしょうか。民主党案は、これらも差しとめ請求の対象に含んでおります。民主党提案者の見解もお聞かせください。

 そして、四つ目です。

 政府案では、適格消費者団体の訴訟による確定判決があると、その後は原則として同一事件についての差しとめ請求訴訟はできないことになっております。こ の点は、弁護士の皆さんであれば御存じかと思いますが、訴訟の効果は原則として当事者に限られるとする民事訴訟の原則に反するのではないでしょうか。民主 党案では、再度の訴えも可能としております。大臣と民主党提案者の見解を伺います。

 そして五つ目、差しとめ請求を管轄する裁判所についてです。

 国民は、普通、訴訟を起こすとき、どこで訴訟を起こそうとするでしょうか。被害に遭った自分が住んでいる都道府県の裁判所でやはりだれでも訴訟を起こそ うとするんじゃないでしょうか。

 政府案では、事業者の営業所等の所在地の管轄を認めることとはしています。しかし、営業所から遠方に出かけての訪問販売、展示会商法、さらにはネット商 法など、地域を問わず被害が広がっている実態が今問題になっているんじゃないでしょうか。

 私は、この制度を実効ある仕組みとして機能させるためには、事業者が不当行為を行ったその行為地の管轄も認めるべきではないかと考えます。政府と民主党 提案者の見解もあわせて伺いたいと思います。

 我が国の消費者政策は、消費者保護基本法の制定以来、国民各層、特に消費者団体などの不断の努力によって着実に前進を続けてまいりました。民主党も一九 九九年、政府に先駆け消費者契約法案を国会に提出し、これを契機に翌年、政府案が全会一致で成立し、事業者の不当行為に消費者は、契約の取り消し、そして 条項の無効を主張できることとなりました。

 しかし、今もなお、地域で地道に暮らす国民、弱い国民こそが悪徳業者にねらわれ、被害に遭っています。小泉政権のもとで広がる格差社会において、消費者 の間には、経済格差のみならず、情報格差、訴訟力の格差までが広がりつつあります。

 そうしたとき、高支持率の政府・与党、小泉政権の役割は何でしょうか。高支持率だからこそ、困難な論点を乗り越えて、最高の法律をつくるべきではないで しょうか。この法律でいえば、今指摘をした五つの点をしっかりと穴をふさぎ、消費者の立場に立って消費者契約法を改正することが政府・与党に求められてい る役割じゃないでしょうか。

 なのに、今の高支持率の小泉政権は、まるでただ高いところを飛び続ける飛行機のようです。苦しむ国民をただ下に見て、高みの見物を決め込んで、そして大 事な部分を先送りして、この法律の改正を進めようとしております。今、地上には、多くの被害に遭っている消費者がいるんです。格差に苦しむ多くの国民がい るんです。総理、大臣、この実態を見ていただきたいと思います。巨大与党ならばこそ、しっかりと地に足のついた法の改正を行っていただきたいと思います。 ただ高い支持率を維持しようとするだけの小泉政権には、私は価値はないと思います。(拍手)

 総理、そして猪口大臣、そのただ高く飛び続けるだけの飛行機からは、この法案だけで五つの穴があき、そこからオイルが漏れているようなものです。地上で 苦しむ被害者、消費者を見るならば、しっかりとこの五つの穴をふさいでいただきたい。

 今や、小泉さんのこの飛行機からは、道路公団、官製談合、天下りの問題を見てもわかるように、改革や倫理という大切な部品までもが次々と落下をしており ます。消費者を見る気がないなら結構です。私たちは、小沢一郎代表とともに、国民と手を携え、新しい政権をつくるのみです。

 常に後追いとなってきた政府の消費者行政に対して、民主党は、消費者の視点からの実効性ある仕組みを整え、消費者の権利擁護を図るべきだと考えます。政 府案に再考を求め、全国の消費者、被害者のために、私たちが指摘する五点の穴をふさぐ改革が行われることを切に願い、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣猪口邦子君登壇〕

国務大臣(猪口邦子君) 泉議員から六問 御質問をいただきましたので、お答え申し上げます。

 まず、消費者トラブルが多発しており、社会不信が増幅することへの解決策を示すべきとの御質問でございます。

 消費者を取り巻く経済社会情勢が大きく変化する中、一昨年、議員立法によりまして制定されました消費者基本法は、これからの消費者政策の大きな方向性と して、消費者の権利の尊重と自立支援を基本理念として置いてございます。この理念を具体化していくことが必要であります。まさに、このたび、平成十二年に 制定された消費者契約法を改正し、消費者団体訴訟制度を導入し、消費者被害の発生、拡大の防止を図ることといたします。

 次に、損害賠償請求権についてでございます。

 消費者被害については、同種の被害が多数の者に及ぶという特徴があることから、被害の発生や拡大を防ぐことがまず何よりも重要であり、事業者の不当行為 そのものを差しとめる差しとめ請求権を適格消費者団体に付与する必要があります。

 これに対し、損害賠償は事後救済のための手段であり、被害を受けた個々の消費者に請求権がありますことから、被害当事者ではない第三者である団体にその 権利を付与することについては、より広く、少額多数被害救済のための手法、司法アクセス改善との関係も踏まえていく必要があるのでございます。こうしたこ とから、損害賠償請求については、今回の制度化の対象とはしていないわけです。

 この点に関しまして、国民生活審議会の報告書では、その「必要性も含めて、慎重に検討」とされたところであり、この指摘を踏まえて対応してまいります。

 次に、適格要件と認定制度についてでございます。

 適格消費者団体につきましては、消費者全体の利益擁護の役割を担うにふさわしい実質を備えていることが必要であるため、団体の活動実績等の要件を設定 し、申請団体ごとに実質的な判断を行う認定制度としております。

 また、認定の有効期間につきましては、団体側の負担等も勘案しつつ、適格団体の業務の適正な運営を確保し、制度の信頼性を維持する観点から、三年として おります。適格要件を満たしている限り認定が更新されることから、訴訟の継続には支障はないと考えます。

 なお、適格団体の活動を支援するため、国民生活センター等の有する消費生活相談情報の提供や、差しとめ訴訟の結果得られた判決内容の公表、周知などを行 うこととしております。

 次に、差しとめ対象についての御質問であります。

 差しとめ請求権は、社会的、経済的に大きな影響を及ぼし得るのであります。ですから、その対象は、具体的、明確であることが必要であります。

 いわゆる推奨行為につきましては、消費者、事業者間の契約を直接規定するものではないわけです。推奨行為の主体や程度には種々さまざまなものがあり、こ れら推奨行為を差しとめ対象とすれば、事業者団体による取引適正化のための活動まで萎縮させるおそれがあります。

 なお、詐欺、強迫や民法九十条の公序良俗違反につきましては、これは一般的な規定であり、解釈の余地が大きいことから、どのような行為が差しとめ対象と なるかという予見可能性の点で問題がございます。
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