衆議院内閣委員会
平成19年6月15日(金)
銃器対策について
国 務大臣(内閣官房長官)
塩 崎 恭久君
国 務大臣
高 市 早苗君
政 府参考人(警察庁長官)
漆 間 巌君
政 府参考人(警察庁刑事局長)
縄 田 修君
政 府参考人(警察庁警備局長)
米 村 敏朗君
河本委員長
次 に、泉健太君。
泉委員
民主党の泉健太です。きょうは銃器対策の集中審議ということで、早速質問に入らせて いただきたいと思います。
まずは、やはり我々、多くの国民が注目をしています愛知県の長久手のけん銃発砲死傷事件、このことについてぜひお伺いをさせていただきたいと思います。
まず、今もけがをされている木本巡査部長、そして大変残念な若い命を落とされた林警部、巡査部長にはお見舞いを、そして林警部には哀悼の意を申し上げた いというふうに思います。残された御家族の方も本当に、小さな子供さんもあるということで、大変残念な結果となってしまいました。ただ、結果論でああだこ うだ言うということではなく、きょうはあえてこのことに触れさせていただきながら、前向きな御提案もちょっとさせていただきたいというふうに思っておりま す。
まず、この事件をいろいろと周辺情報で調べさせていただいておりますけれども、やはり私たちとしては、被害者が出てしまったということは大変残念だとい うふうに思っております。そして、多くの国民が一般論としてやはり考えておられることというのは、なぜけがをされた警察官の方が長時間その場にいなければ ならない状況になってしまったのか、そしてなぜ被害者が出てしまったのか、この二点かというふうに思います。
そのことについて、きょうはぜひ警察庁の方からも可能な限りの情報の公開と、そして見解をいただきたいというふうに思います。
まず、私がこの事件を調べるに当たって思いましたのは、この事件に当たっては愛知県警のいわゆる特殊部隊でありますSAT、そして刑事部の捜査一課にあ る特殊事件捜査係SIT、そしてまた、機動隊の銃器対策部の部隊が出ていたというふうに認識をしておりますが、長官、その認識でよろしいでしょうか。
漆間政府参考人
出ていった部隊については、そのとおりであります。
泉委員
それで、これまで我々が学んできたそれぞれの部隊の特性というもので考えますと、 SATというの は、基本的にはテロ事件、ハイジャック、そして多数の武装集団に対して対処する部隊であるというふうに学んでまいりました。一方で、SITというのは、立 てこもり、誘拐人質事件、そういったものに対する刑事事件への対処としてこのSITというものが存在をしているというふうに学んでまいりました。機動隊の 銃器対策の部隊については、例えば原子力発電所や重要施設の警備、そして、もし緊急事態が起こった場合には後方支援、SATやSITの後方支援に回るとい うような認識を持ってきたわけです。
今回、単独犯ということは事実上明確であった。そして、持っている武器も、いろいろと犯人がほかの武器も持っているということを言っていたとはいえ、大 体外形的に判断するに、銃を所持しているということで、人質を一人持っていたという状況かと思うわけです。
当初は、その性質からいけばSITが対応するものであるのかなというふうに思うわけなんですが、なぜそこに特殊部隊であるSATがいたのか、このことに ついてお答えをいただきたいというふうに思います。どうしてSATがこの場所におられたんでしょうか。
漆間政府参考人
通例の人質立てこもり事件であれば、今、委員おっしゃるとおりの捜査一課に ある特殊班が 出動するということになるわけですが、今回の場合は、まず室内に人質がいる、屋外に撃たれた警察官が実質的な人質として、これは動かしたら殺すぞと言って いるわけですから、だから実質的には屋内外に一人ずつ人質がいるという大変難しい状態であって、しかもけん銃をもう既に三人に対して撃っているわけであり ます。
そういうことで、当時、愛知県警の本部長としては、やはり単なる特殊班だけでやるのではなくて、特に倒れている警察官、これの救出を優先しようという考 えもありまして、そこでSATという、いわゆる相手を殺しても、能力も持っているそういう部隊を支援に回すという形でSATを使うという判断をしたんだと いうふうに思っています。
泉委員
今まさに、長官がおっしゃられた点なんですね。犯人を制圧するという点からもSAT を投入したと いうことかと思うんですが、では、SITというのは犯人を制圧する、場合によっては射殺をする、そういう機能を持っていないんだろうかということも、私は これはもう一回検証しなければならないのではないかというふうに思うんですね。
このSITも、実際には狙撃班、狙撃をする方もおられますし、サブマシンガンや特殊閃光弾、ライフル、そういったものを持ちながら、一方で、SITの特 徴としてはネゴシエーターもいて、交渉も行いながら円満解決を目指していく。一方ではそういう要素、これは私は素晴らしいことだと思います。
すべての方々が無傷で事件が解決すること、これはすばらしいと思いますが、ただ、先ほど長官がおっしゃられたような要素というのは、もしSITが持って いないとしたらそれはそれで私は大きな問題じゃないのかなというふうに思っておりまして、装備を見れば、十分、犯人に対して時には制圧をするという機能も SIT自身が持っているはずだというふうに私は思いたいんですね。だけれども、今、ともすればSATがあるから、SITは交渉も含めてできる限り円満解決 を目指す部隊である、そして強行する場合はSATなんだと、何かそこに役割の変化がもしかしたら出てきているんじゃないのかなという気がしてならないんで すね。
ですから、もう一度お伺いしますが、SIT自身にもそういう能力があり、時にはそういった強硬な制圧もSITというのはとり得るんだということで、もう 一度見解をお伺いしたいと思いますが、いかがですか。
縄田政府参考人
当日私も愛知県警とやりとりをいたしておりましたので、私の方から若干申し 上げたいと思います。
SITの部隊は、委員御指摘のように、ネゴを中心にやりながらということだけでは当然ございませんで、銃器も使用し、あるいは制圧をするということも念 頭に、突入等々の訓練を日々行っております。
SATとの関係等々でございますけれども、これは、現場の状況等々があります。制圧するのにどういう方法がいいのか、いろいろな検討がなされました。そ ういった中で、それぞれ部隊の特性がありますので、それを有効に生かすためにはどうであるか、そういう視点で検討した中で、SITの配置あるいはSATの 配置等々が決まってきたと私どもは承知をいたしております。
泉委員
確かに、日々こういうことの研究と訓練を続けられている警察ですから、基本的には私 はその判断というものは理由があっての判断だというふうに思っております。
ただ、多くの国民がやはり不思議に思っている、疑問を感じているというこの事実も受けとめて、国民の声あるいは警察の一部の方がもしかしたらどこかの本 音で思っている、その声をきょうはあえて局長や長官に聞いていただく場だというふうにどうか御理解をいただきたいと思いますけれども、その意味で、それは 愛知県警本部長の御判断というのはあるでしょう。しかし、ではSITで果たして人数が足りなかったからSATを呼んだのか、SITではできないことがあっ たからSATを呼んだのか、私はそこは、率直に言って疑問を感じざるを得ません。
それ以上はなかなか言いづらいところもあるかもしれませんが、本来、この機動隊の銃器対策部隊も、そしてSITもSATも単体で動いても事件に対する対 処能力がある、これはもう当たり前のことのはずです。それがなければ逆におかしい話です。もっとそれぞれの組織を拡充しなきゃならないはずです。にもかか わらず、今回、三つの部隊がすべて現地に向かっていた。
これはあえて言いますが、例えば、こういった多くの国民が注視している事件の中で、本当はほかにも部隊があるのにそれが出動していないのは全力を尽くし ていないということじゃないかと言われてしまう、そういったことに対する不安というかためらいであったのかもしれませんし、そして、もっとはっきり言え ば、確かにSATというのは非常に出動回数が少ない、これは日本の治安のよさのおかげでもありますが、場数を踏む機会が少ない、率直に言えばそういうこと もあると思いますよ。そういう中で、こういった事件に対して、それの支援ということであっても、できる限り現場、現地を、その場数を踏ませたい、こういう モチベーションも働いたのかもしれない。あえて言わせていただきます。
しかしながら、そういう中で、全くの後方支援の役割しかなかった、実際には突入をすることはほぼないだろうと思われていたSATの隊員が殉職をされた。 これはやはり悲しいことじゃないでしょうか。その殉職はたまたまのことというか、偶然に偶然が重なったことだというふうに私は思っております。しかし、多 くの報道機関が映像を撮影し、配置や装備を表にさらけ出すような状況の中で、本当に特殊部隊の方々が、あのときにあの事件に関与すべきだったのかどうか、 ここは私は、真摯に検証をしていただく必要があるというふうに思います。
今私が述べた点について、長官、言いにくいこともあるかもしれませんが、改めて御答弁をお願いします。
漆間政府参考人
先ほど申し上げましたように、今回は、普通の立てこもり事件とは違う要素 と、やはり銃で 撃たれた警察官を救わなきゃならない、そのときに、つまり捜査一課の特殊班だけでそれができるのか、それから、それぞれやはりいろいろ違った能力を持って いますから、だとすれば、合理的にその能力を持っている者の支援も受けるというふうなことを考えるのも、それは別におかしなことではないだろうと思いま す。
別に、今おっしゃられたように、SATが余り出動する機会がないから、そういうことでいろいろそういう場をつくるんだというようなことではなく、SAT はそれは出動しない方がいいには違いありませんが、出動しなくても、ともかく訓練は猛烈な訓練を積んでいるわけでありますから、別にこういう現場に必ず出 して訓練を積ませるなんということをしなくても実際の訓練をやっているわけです。
ただ、先ほど申し上げたように、それぞれの能力が発揮できるとすればこういうことがあるだろうということで、SATの支援をかりる部分があると判断した からSATを使ったんだと思います。
泉委員
そこで、もう少し具体的に話をさせていただきたいんですが、二〇〇二年の福岡での立 てこもり事件 があって、翌年から、これまでそういった人質誘拐関係についてはSITがやってきたんだけれども、各警察本部にSATも積極投入をしていくようにとの指示 があったというふうな新聞報道がございますが、これは事実でありますでしょうか。
縄田政府参考人
私どもといたしましては、さまざまな事件を踏まえながら、改善する、あるい はさらによい方向でどういう捜査ができるかということで検討を重ねていっております。
ちょうど、御案内のような事案も契機にしながら、人質立てこもりチームといいますか、こういったものをつくっていこうということで全国に指示したことは 事実でございます。
泉委員
そういった指示もあるわけですね。
ですから、実は、警察白書等には、例えばそれぞれの隊の役割が書かれているわけですけれども、徐々にこれがもう変質しているというふうに私は認識してい いんだと思うんですね。SATも人質立てこもり、そういったものに対応していくし、SITも実は、SATのない地域においてはハイジャック対応の訓練なん かをされているというふうに、読むものを読めば書いてあるということからすると、そこの垣根が今どんどんなくなってきている状況にあるのではないのかなと いうふうに思うわけです。
一方では、例えばハイジャック訓練、これは今までSATとSIT合同でなされたことというのはどれぐらいございますでしょうか。
米村政府参考人
お答えいたします。
SITとSATが合同で現実にオペレーションをするということで、人質立てこもり事件等に関しては訓練をやっているということがございます。
委員御案内のとおり、そもそもSATは、昭和五十二年のダッカ事件を踏まえて発足をしたものでありまして、ハイジャックというのが最も典型的な例でござ います。しかも、そのハイジャックに対する自己完結的な対処能力を持った部隊ということでありまして、この点に関してSITと合同で訓練をしたということ は私は記憶しておりません、ないと思います。
泉委員
ただ、さっきも言いましたように、SITはハイジャック対処の訓練をしていますね。
縄田政府参考人
緊急にいろいろ発生した場合には、SATあるいはSIT、こういった特殊な 部隊でしっかりと訓練をした者が当たるのがベストであるのは当然でありまして、そういう運用はなされております。
しかしながら、各都道府県警察の管内で、これはいつ起こるかわかりませんし、直ちに対応しなきゃいかぬという場合もあります。極端に言えば、署長指揮で 物事に対応していかなきゃいかぬ、あるいは、先ほど言いました県のSITあるいは特殊班といいますか機動捜査隊等で連携してやらなきゃいかぬ場合もある。 そういったことで、各都道府県ではさまざまなことを想定しながら事案に応じた訓練を行っておる、このように承知しています。
泉委員
わからなくて聞いているんですが、例えば愛知県ではSITとSATの合同訓練という のはなされたことはあるんでしょうか。
縄田政府参考人
合同で訓練を何度か実施しておる、このように承知をいたしております。
泉委員
もう時間が余りありませんので、ただ、改めてお話をしたいのは、それぞれ装備につい てはほぼ変わ りがないという状況まで来ていると思います。先ほどお話がありましたように、ハイジャックでいけば、単独で対処できるようにSATというチームが組まれて いるわけですね。SITというものも、基本的には単独で人質立てこもり事件に対応できるようにあるべきだというふうに私は思っていまして、SATの協力が なければSITが最善を尽くせないんだということであれば、それはやはり解せないというところがございます。
ですから、SATの協力があれば確かにプラスアルファでより強化されるのかもしれませんが、しかし、SITだけでも十分な人質立てこもり事件への対処が できるということを、ぜひ今後も強化をお願いしたいと思います。
そして、一般にはやはり、SITというのはネゴシエーターがあるという現状もありまして、どうも発砲ということにちゅうちょしているというイメージがあ るのではないかというふうに思っております。もちろん発砲についてはちゅうちょするのが当たり前ではあるわけなんですが、しかし、もう既に犯人は一度銃を 撃って二人にけがをさせていたわけですね。それからこの事件が長時間継続して解決に向かっていったということを考えると、私は、これはもういつ狙撃をして も、それは射殺になるのか、射殺ではなくどちらかの部位を撃って相手を人質から離したり、あるいは銃を手放させたり、そういうねらいを定めたものになるの かわかりませんけれども、そういった狙撃のチャンスというものをずっとうかがっていて、そのチャンスがあれば即座にそういったことをするという状況であっ てよかったのではないのかというふうに思います。その辺は、恐らく専門家の皆さんの中で検討がなされていると思いますが、結果としては大変残念な結果であ りました。
警察の方からいただいている資料でも、SATについては被疑者を検挙するということが書いてありますが、SITについては特殊事件の捜査に当たることを 任務としているという、もしこの書きぶりの中に、そういった検挙と捜査の中に違いがあるのであれば、それはおかしな話ですから、やはり同じ対応をという か、SITにもそういった対応ができるようにというふうに思っております。
あと、一番最初に現場に到着をされた巡査部長についてなんですが、銃の取り扱い規範の中には、「犯罪、事故等の発生等に際し、警察官をその現場に向かわ せる職務を担当する者は、複数の警察官をけん銃の使用が予想される現場に向かわせる場合には、できる限り、」「役割分担が行われるよう、必要な指示をする ものとする。」というふうに書いてありまして、その意味では、第一報がけん銃を持って暴れているという一報であったならば、後でおもちゃだったからという 第二報があったにせよ、それはやはり、当然防弾チョッキというものをつけていくことの改めて教育の徹底、これもぜひともお願いをしたいというふうに思いま す。
その意味では、私は、厳格に言えば、この規範をやはりちょっと見過ごしてしまった現場の対応があったのではないのかなというふうに言わざるを得ないとい うことを思っております。
そして、次になりますが、報道規制についてです。
報道規制についてなんですが、それぞれ協定を結ばれているというふうに思うわけですけれども、今回の事件についても、やはり随分と報道機関がヘリなどを 飛ばしました。今回の愛知県の事件については、これはどのような協定の中身だったんでしょうか。
縄田政府参考人
報道の協定ということでお尋ねでございますけれども、警察といたしまして は、報道機関と の関係につきましては、これは報道の自由を十分配慮するということは当然であります。しかしながら、人命にかかわる事柄については、ケース・バイ・ケース で取材あるいは報道の自粛等を報道機関にお願いすることがございます。今回の場合も、そのようなお願い、依頼等もいたしました。
今の、委員おっしゃいました報道協定と申しますのは、若干今回のようなケースと違うもの、対象を範疇にいたしております。これは、報道機関が取材とか報 道することによって被害者の生命に危険が及ぶ、報道されることによって直ちに危険が及ぶような、誘拐事件とかあるいは恐喝事件とか監禁事件等々でございま して、そういった場合には、警察の方から報道機関に対して報道の自粛等をお願いするといいますか依頼をする。それで、報道機関の方で、ではそれは理由があ るなということで報道を自粛する等々の対応をされるものでございまして、今回の事案と直ちに直結するものではないものだと考えております。
しかしながら、先ほど、冒頭にも申し上げましたけれども、事案によって、推移によっては報道によって人命にかかわる事態が当然生じるわけでございます が、そういった際には報道機関への自粛ということも申し入れていく、こういうことであろうと思っています。
泉委員
もう時間が過ぎましたが、きょう、官房長官にもお越しをいただいております。官房長 官には、高市 副本部長もおられますが、銃器対策推進本部の中で高市副本部長が、銃刀法で銃器の不法所持の罰則に罰金を加えるという御提案をなされたというふうに私は認 識をしているわけですけれども、記事か何かでそれは出ていたと思うんですが、そういったことはされていませんでしたか。
高市国務大臣
罰則強化の検討について指示をしたということで、具体的に罰金をどうとか、そ ういった形ではございません。
河本委員長
泉君、時間が過ぎております。
泉委員
はい。
そういった罰則強化ということについて、官房長官、本部長として、私も、これまで発射罪ですとか部品の譲渡ですとか、さまざまな銃器にまつわる罰則の強 化というのを行ってきたと思うんですが、まだまだこの銃器犯罪、逆に、一般市民への銃の流出とかの比率がどんどんふえているという現状がありますので、ぜ ひこの罰則強化はしていただきたいと思っております。そのことについての御方針、今何かございましたら、お願いしたいと思います。
塩崎国務大臣
先生、先ほど事件が起きたときの対応について細かく御指摘をいろいろといただ きましたが、 先ほど渡辺先生の質問に私から答えたように、アメリカと日本と比べてみたときに、かつては日本はこの銃器犯罪というのはほとんどなかった、ごく限定された ところでしかなかったわけですが、日常生活で起きるようになったときに、やはり抑止効果というか、もともとの安全な社会を取り戻すためには、いろいろな手 だてを考えなきゃいけないということで、今、高市大臣を中心に、プロジェクトチームで頑張っていただいております。
その中で、罰則強化の問題については、警察を中心に前向きに考えてもらいたいというふうに私からも申し上げているところでございます。
泉委員
質問を終わります。
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